写真家の話

写真家

写真家としての歩み探る時間に
写真家 小林哲朗さん

仕事は学校関連の撮影で、4月に入学式を撮って以来ゼロになり、正直先行きへの不安感も持ち始めていました。フリーランスへの100万円給付があり、なんとか持ち堪えた感じです。外出自粛期間は、夫婦と小2と1歳の娘の家族4人で、ずっと家に居るって感じでしたね。

自粛期間中、今後の仕事に繋がればと、ツイッターで積極的に発信してました。2年ほど前からしていましたが、この数カ月でフォロワー数が倍増し1万人を超えました。いわゆるバズるってことも何度かあって、杭瀬の商店街に並ぶ「ハイジ」と「くらら」の店を撮った写真は、8万いいねがつくほどに。最近、講演会でも「ツイッターで知りました」と参加してくれる人もいて、効果を感じてます。

自粛期間明けからは自分の作品づくりのための撮影に出かけるようになりました。今まで単純に「このプラントがカッコいい」と思って撮影してたんですが、最近は、工場のある街の風景といった、俯瞰的に写真を撮ることを意識するようになりました。ただカッコいいじゃなく、工場写真にもうちょっと意味を持たせたい、という思いがあります。

工場写真を撮り始めて15年ほどになりますが、実は自分のなかで「飽きた!」って瞬間が3回くらいあったんです。でも、需要があるから撮り続けていると、また新たな面白さを発見する、って感じで続いてます。だから同じ被写体を追い続けていく意味もあるな、と今は思っています。工場以外にも「撮りたい」と興味がわく被写体を探しはしているんですけど、まだ見つからないんですよね。

これまで写真家としてやってきたのは運の良さもあったと思います。でも改めて考えると、これからも写真家を続けていくにはまだ盤石じゃないな、と思いが湧いてきました。今、初めて「写真論」の本なんかを読んでるんですよ。哲学とか芸術の面からどう捉えるのか、理解できない部分やどこが面白いのか分からない写真も載ってますけど…。これから自分が写真家としてどう進むかというヒントが得られるかな、と思って。■香


こばやしてつろう・フォトグラファー。廃墟、工場、地下、巨大建造物など身近に潜む異空間をテーマに撮影。その他ポートレートやドローンによる空撮などジャンルを問わず。『工場ディスカバリー』など4冊の写真集と工場撮影ガイド本を1冊出版。