サイハッケン 日本初の防災公園が尼崎にあった。

明日誰かに話したくなる尼崎南部の知られざる話題。「あれちょっと調べてきて」という情報も募集中です。

阪神タイガースの2軍本拠地を西宮市の鳴尾浜球場から大物駅の東にある小田南公園に移転するという計画が浮上した。そもそも今回注目される小田南公園とはどんな公園なのか。

園内には、広大な芝生広場が目の前に広がり、ベンチでくつろいだりストレッチをしたりと思い思いに過ごす人々の姿があった。野球場からは選手の掛け声が、木々からは鳥のさえずりが響いている。並木道を進むと、ごつごつとした石で囲われた池や水の流れが目の前に広がる。こんな自然に囲まれながらゆったりとした過ごせる空間が尼崎にあったのかと驚いた。

しかし、小田南公園は、単なる憩いの場ではないそうだ。真相を明らかにすべく、尼崎市の公園・緑化行政に携わった市役所OBの榎本利明氏の著作『尼崎市の公園』のページをめくった。すると、同公園は1983年に完成、「防災公園の第1号事業」との記述が。つまり、「日本初の防災公園」なのだ。地震や大規模火災の際の避難地・復旧活動の拠点として活用されることを意図して設計されたという。その工夫は細部にわたる。

避難住民の安全性に配慮した樹木の植栽計画だったり、隣接する工場の危険物が爆発した場合の爆風圧を想定した倒木のシミュレーションまでして設計されていたのだ。

「防災公園として定常時に親しみ、安全のイメージを定着させているかが避難行動の迅速さ、円滑さを左右する」と手軽に運動を楽しみ、自然を身近に感じられる場として整備された。

そんな小田南公園に舞い込んだ阪神タイガース2軍の移転計画。市によると、公園には新たに野球場や練習場を設置するという。またすぐ北にある大物公園もあわせて再整備するそうだ。

市民からは「飲食店や商店ににぎわいが期待できる」「子どもたちにとって、プロ野球選手が身近な存在になる」といった声が上がる一方、「自然の少ない地域にとってこの公園は貴重な場だ」「樹木やため池を残してほしい」といった声もあり、意見は様々だ。

保存と活用。それぞれの意見を取り入れながら、市民の安全を守る公園の魅力がさらに増すことを願うばかりである。


取材・文/内海ありさ
尼崎市の子ども広場が設置された経緯を調べています。