いきなり書店開業マニュアル もしも本屋ができたなら

本屋を開くのに、一体どのくらいお金がかかるのか?

尼崎の相場家賃として月坪1万円の10坪の店を開くとすれば、と家賃月10万円、それに手数料・礼金+保証金6カ月+開業準備期間2カ月分で、店を借りた時点で最初に100万円はふっとんでしまう。

本棚やレジはリサイクルショップで用意、内装も手作りで行えば、準備資金は奇跡的に50万円で収まるかもしれない。とはいえ、この時点で150万円が消えているし、準備している間の自分の生活費も考えるとまだまだ手元に必要だ。で、開業するにあたって、販売する本を仕入れないといけないが、10坪の店で本屋をやるには、少なくとも5000冊の本が必要となる(1坪500冊が目安)。

もしあなたが古書店を開業するのであれば、最初の5000冊くらいは自分の所有本や知人から無料でかき集めたいところ。実際に本を仕入れるとなると、1冊10円の文庫本から1冊数千円から数万円の美術本までいろいろ。古書交換会で入札しようにもまず組合への加盟費として数十万円が必要で、何かとお金がかかってしまうからだ。

ただ古書店は新刊本と比べて仕入が安い分、利益率が高く(粗利7割)、10坪の古本屋であれば、家賃や水道光熱費や家賃、自分の人件費を勘案すれば、月売上40~50万円あれば十分にまわるだろう。それでも1日当たり約1.5万円程度の売上を確保しないといけないので、ネット販売をしたり、雑貨や新書本も一緒に売る工夫をしないとなかなか生き残れない。

一方、新書店となるとちょっと厳しい。新書本は利益率が低く(粗利2割)、同じ10坪の店なら、月商140~180万円は必要となるからだ。1冊1000円としても、棚の3分の1が絶えず売れ続けなければならない、というのもやや非現実的だ。

加えて、新刊本は仕入れ費用もかかる。古書と違って無料でかき集めるわけにはいかない。いくら再販制度に守られ返品可能とはいうものの、最初の大手取次業者への保証金として積まなければならないお金は、月商の3カ月分と言われている。もちろん出版社との直接取引や保証金を抑えた卸業者も出現しているので、もっと安くすませることはできるかもしれないが、いずれにせよ古書店よりはるかにお金がかかる。よって新書店を開業するならば、カフェやワーキングスペースを併設したり、5坪くらいのこじんまりしたスペースから始めるのが良いかもしれない。


文/齊藤成人