この尼崎本がすごい 2021

2007年、本誌第24号で特集した「この尼崎本がすごい」。あれから15年の間にも、この街を描いた小説や児童書、ノンフィクションが数々発表されている。今回はその中でも今読みたい6冊を紹介。お求めは地元の書店や図書館でどうぞ。

親子と親友との「笑い」で涙

尼崎ストロベリー 成海隼人 幻冬舎

尼崎はお笑いの街だと人はいう。ダウンタウンに岡八郎、チャンス大城(誰やねん!)など多くのお笑い芸人を輩出。そんな尼崎で幼少期から漫才を見ては良し悪しを語るのが唯一の楽しみという母と子の物語だ。その母が末期癌の宣告を受ける。「笑い」が癌に効くらしいことを知った息子は、母を笑わせ続けていれば治癒するのではないかと考え、やがて親友と高校生漫才コンテストに出場する。ショウタニ、工業の神…なじみのあるまちの風景が本に出てくるのもうれしい。(立石孝裕)


尼いも食べて時空を超えろ!!

大坂オナラ草紙 谷口雅美 講談社

江戸時代の大坂に古文書とオナラをすることで行き来するユーモア溢れる児童文学作品。大好きな絵を描くことで友だちを傷つけてしまい、絵を描くことを止めていた主人公平太が、過去と未来を行き来する中で出会う人々との繋がりを通し、過去・現在・未来、そして伝えることの意味を考え、成長していく姿が清々しく描かれた一冊。尼いも愛を感じる装丁も必見!作画はイシヤマアズサ。第58回講談社児童文学新人賞入選作品。(森本昌江)


世にも奇妙な尼物語

尼崎百物語 大江篤編 神戸新聞総合出版センター

市制百周年にちなんで尼崎市内に伝わる「不思議な話」を百話収録。MAPを見ながらご近所にこれだけ怖くて哀しい話が伝わっているのかと驚く。流罪や左遷で尼崎を通過した歴史上有名な方々のエピソードが満載。菅原道真や崇徳上皇、あの人もこの人も尼崎を通っていたなんて。たった一晩滞在しただけで「もうネギは食べない」「毎年必ずお膳をささげる」などの伝承が何百年も続くことの面白さ。漂泊の貴人に対する人々の優しさが感じられる一冊だ。(井口廣子)


生きる権利、死ぬ権利?

安楽死特区 長尾和宏 ブックマン社

2024年、我が国で「安楽死法案」が可決。病を抱え安楽死を願う男女が国の策略にはまっていく。「安楽死」という重いテーマを扱いながら予想外の結末に。2021年2月には、長尾医師の作品を基にした映画「痛くない死に方」とドキュメンタリー映画「けったいな町医者」が公開された。国道2号線沿い、三和本通り商店街近くの長尾クリニック院長で、多くのベストセラー医学書を出版する地元のお医者さん初の本格医療小説。(高瀬悦子)