【今こそ行きたい地元本屋】時空を超える3万冊 街にあふれる古書の山

本に囲まれる加納さん。

街の草 武庫川
武庫川町2-29-6
12:00~19:00 火水休
店名は加納さんの学生時代の愛読書、仏の青春小説「街の草」から。

阪神武庫川駅に古本の山がそびえていると聞き、駅から東へ。シャッターが目立つようになった商店街や市場を抜けるとそこには、本や雑誌の山、いや山脈が店先に並んでいた。古書店の名は「街の草」。店主の加納成治さんがここに店を開いて35年、今や市内有数の老舗古書店となった。

加納さんは、ほとんど店の外に居て、道行く近所の顔なじみに「こんにちはー」と柔らかな挨拶を交わしながら、本の束を荷ほどき、一冊ずつ中身をチェックしている。時おり、その中から、掘り出し本を広げて見せて、「これはなかなかええ本やと思うんやけどなあ」とか言いながら、やんわりとおすすめしてきてくれたり。

その間も、自転車に乗ったまま軒下に並ぶ雑誌や均一本に手を伸ばし「これちょうだい」と常連の姿。100円チャリーンと置いて颯爽と過ぎ去るドライブスルーおじさんや、柄谷行人の評論本について語り出す永遠の文学青年氏など、客の顔ぶれも多彩だ。

街に溶けこむ本たち。
なんと20円均一箱が。

蔵書2000冊からスタートし、毎週の古書組合の買取を経て、今や3万冊を超える。加納さん曰く、「古書は時空を超える」。この本の宝の山(山脈?)崩しにぜひ足繫く通うことをおすすめしたい。


取材・文/香山明子