大災害 その時尼崎は?

台風21号で大きな被害を受けた尼崎。大きな災害が起こった時、45万都市はどのように機能するのか。災害対策の仕組みについて改めて確認しておこう。

ベイコム総合体育館で行われた平成30年尼崎市防災総合訓練(ロールプレイング型図上訓練)の様子(8月31日実施)

尼崎市の災害対応は、地域防災計画に体制や人員が定められている。要となるのが危機管理安全局だ。気象台からの情報をいち早く把握し、関係機関と連絡を取りつつ、庁内の関連部署から学校、公民館などの出先機関までを統括する。8月23日の台風20号を例に動きを追ってみよう。

発令「水防1号指令」

朝9時半に局内で体制確認の後、10時に庁内各局の担当課長が集まる準備会議。市長に報告した直後の11時20分、気象庁が暴風波浪警報を発表。想定より早かった。正午、市長を本部長とする市水防本部が「限定水防指令」発令。河川や道路担当の都市整備局、避難所となる学校を持つ教育委員会など関係部署がスタンバイした。13時には、市民の希望があれば小学校を開ける自主避難の受付を開始。14時52分、高潮警報。17時に「水防1号指令」発令。18時40分、大雨警報。日付の変わる24日0時前後から約3時間、台風が最接近。0時32分に洪水警報が出た。警報がすべて解除され、水防1号指令が解かれたのは朝8時半だった。

水防本部と災害対策本部

防災指令や配備態勢は、河川水位や潮位、雨量予測に応じて決まる。上記の水防1号で232人(消防局除く)、水防2号では369人(同)。職員は水防本部の指示で動く。

「一般に知られる『災害対策本部』は、さらに大きな災害、たとえば震度5弱以上の地震などで設置されます。これも規模によって段階があり、第1号防災指令で920人体制、第3号指令だと100%、つまり全職員3231人が災害対応に当たる。阪神・淡路大震災では、1号体制が長く続きました」と、辻本ゆかり・危機管理安全局長。聞けば、9月4日の台風21号も、20号と同じく、「水防本部設置・水防1号指令」の範囲に収まったという。

長期化した停電との戦い

意外な感じがする。21号では、重症4人を含む負傷者16人、公園や街路樹の倒木が335件。広範囲で停電が起こり、1週間以上続いたところもある。数十年ぶりの甚大な台風被害ではなかったか。

だが、停電は関西電力の担当で、市の管轄外。これが市民の混乱の原因になったという。鳴りっ放しだった苦情・問い合わせ電話は、ほぼ停電に関する内容。その都度、市役所に詰めていた関電の連絡員に報告したものの、復旧は任せるしかない。

「携帯・スマホの充電や猛暑対策のため、クールスポット避難所を開設するなど、市でも可能な対応はしましたが、あれほどの規模と長期化は経験がなかった。そのために情報把握に時間がかかり、発信も不十分だったという反省はあります」

災害時は正確な情報が命。情報発信の充実は市の課題だが、市民にも「尼崎市防災ネットへの登録をぜひ」と呼びかけている。


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