水コラム 水と生きる尼の神様

高潮と河川による度重なる水害。それらを神社は静かに物語っていた。水とともに生きる、尼の神さまたちのお話。

水害とスサノオさん

水害の歴史を物語る神社がある。その名はスサノオ神社。須佐男、素戔嗚という漢字の違いはあるが、『尼崎神社あんない(市内六十六社のしおり)』によると、スサノオノミコトを主祭神とする神社は24社とおよそ3分の1を占める。こちらの神様は、ヤマタノオロチという大蛇を退治した逸話が有名だが、これが転じて荒れ狂う川の氾濫を治める姿に神話化したといわれる。

「うちのご祭神でもあるスサノオさんは、農業や勝負事など色々な顔を持っておられますが、当社では昔から暴れ川として恐れられた武庫川に睨みをきかせてくださる神様として永く崇敬されてきました」というのは大庄北にある大島神社宮司の森本政典さん。南向きや東向きであることが多い神社としては珍しく、西を向いて建てられた社殿の前に立つと、武庫川に睨みをきかせてくださるというスサノオ神の雰囲気を感じるような…。

「たいせつな田畑、かけがえのない命を水害から、どうぞお守りください」と、神に祈りながら尼崎の人たちは水とともに懸命に生きてきた。尼崎市内にスサノオ神社が多いのは「水害から地域を守ってほしい」という人々の願いの表れなのかもしれない。