知らずに住めるか! BOSAI Q&A

いざという時に「知らなかった」ではすまない、尼崎の防災にまつわる基礎知識。しっかり頭に入れて今こそ備えよ。

津波が起きたらどうなるの?

高潮は台風の低気圧に海面が吸い上げられ、波が高くなる現象だが、津波の場合は海底からの海面までの水全体が一気に陸に押し寄せるため、その対応はまったく異なる。南海トラフ巨大地震による大津波は、地震発生から117分で尼崎港に到達すると予想されている。最高津波水位は4メートル。尼崎を囲む防潮堤の高さは5.7メートルなのでセーフ、と安心していいのだろうか。

巨大地震による震度は市全域で6以上、臨海部は強震動による液状化で、防潮堤や尼ロックといった防潮施設が沈下することも。津波がこれらを越えて流れ込んだ場合を想定したハザードマップが、尼崎市から発表されている。

さらには津波の引き波で防潮堤が破壊されるのではないか、という専門家の指摘も。もはや想定外すら想定できない大津波に対して、私たちはどうすればいいのだろうか。

「川沿いを避けまずは北へ。そして3階以上へ。市内の全小学校で耐震工事も終わっているので、一時避難場所として覚えておいてください」と先の辻本局長。市役所ホームページで公開されている津波ハザードマップをよく見ておく必要がありそうだ。

避難所っていつ行ったらいいの?

避難情報は「避難準備・高齢者等避難開始」「避難勧告」「避難指示(緊急)」の3つに大きく分かれている。台風や高潮では河川水位に応じてこれらが出され、「避難準備」では家族などと連絡を取り合い、非常時持出品などを準備する。特に避難に時間のかかる人は避難行動を開始するのがこの段階だ。

次の「避難勧告」では避難行動を開始。今いる場所が不安な場合は、近隣のより安全な場所や建物等への避難を呼びかけている。そしていよいよ危険性が高まった時に出るのが「避難指示」。私たちが取るべき行動は、速やかに避難すること。近隣の学校などに設置された避難所への移動がのぞましいが、これがかえって命の危険を及ぼしかねないと自ら判断するときは、近隣のより安全な場所へ。

実は今回の台風21号では避難情報は出ていない。あくまでも「自主避難」というものだったため、市民からの要望に応じて順次開設する体制だったという。避難情報は出ていないけれど、避難が必要かも、と思ったらまずは市役所に相談するのがよさそうだ。

ほんまに今の震度2? 震度計ってどこにあるの?

「尼崎では発表された震度よりも、ずっと強く揺れている気がする」という声をよく聞く。一体、震度計はどこに設置されているのだろうか。その場所は尼崎市防災センター(昭和通2)の敷地内。どんな重厚な設備かと思いきや、建物裏の駐輪場の片隅にそのボックスはひっそりと置かれていた。案内してくれた消防局の前田さんに、中を開けてもらうと、さらに小さな箱が現れた。この1カ所で尼崎市の震度を計測しているのだ。「阪神淡路大震災があり、その後、防災センターに設置されました」という前田さん。年1回の点検以外は、扉を開けることもないという。

箱の中にある玉が揺れてセンサーが反応すると、県の災害対策課と気象庁に連絡が入る仕組みになっている。県下に設置された106カ所を管理するのは兵庫県災害対策課。どうしてあんな場所にあるのか聞いてみた。

「基本的には公共施設に設置します。道路の振動などでセンサーが感知しなければどこでもいいんです」と県の担当者。尼崎の震度計はちょっと強いんじゃないか、という質問をしてみると「揺れの感じ方は人それぞれ。機械と感覚に誤差があるのでは」とばっさり。よくわかりました。

なんで尼崎市だけ警報が出ないの?

台風シーズン、学校の休校情報は子どもだけでなく大人にとっても気になるところ。そのための基準になるのが気象警報なのだが、「尼崎は根性があるからか、なかなか警報を出さない」「まわりは真っ赤(警報)なのに尼だけ黄色(注意報)。さすが阪神ファンのまち」といったまことしやかななウワサが飛び交う。特に大雨の時は、周辺の地域と比べても警報が出にくい印象だ。

気象警報は市役所や教育委員会ではなく、気象庁が風速や潮位、雨量指数などからなる指標に応じて発表している。気象庁ホームページをみると大雨警報には「大雨(土砂災害)」と「大雨(浸水害)」という2種類に分けられている。

「西宮や伊丹、宝塚といった隣接市では予想降水量によって土砂災害の警報がはじめに出ますが、尼崎には山がないので注意報のままなんです」と教えてくれたのは、市危機管理安全局長の辻本ゆかりさん。そのため、浸水害のおそれが出る雨量になって、ようやく尼崎に大雨警報が出るという仕組みになっているのだ。

山のない尼崎では土砂災害の心配はなく、それだけ安全というのは嬉しいことだが、休校を祈る子どもたちにとっては、何とも手強い街ともいえよう。