いい広場の条件ってなんですか?

富山グランドプラザを皮切りに、八戸・豊田・泉北・神戸・明石・久留米といった各地のまちなか広場づくりに関わる山下裕子さん。「広場ニスト」の異名を持つ彼女に、阪神尼崎セントラルパークの可能性を聞いてみた。

[教えて!広場ニスト] 山下裕子(ゆうこ)さん
1974年生まれ。全国まちなか広場研究会理事、NPO法人GPネットワーク理事。

「立派な樹木も育っているし、植栽や噴水がゆったりと配置されていて、滞留空間としての余白がありますね。とてもいい広場ですよ」と、いきなり中央公園をベタ褒めしてくれた山下さん。「駅から外へ出ると一気に景色が広がる。見通しのよさとアクセスのわかりやすさが大切なんです」とまずは合格点をいただいたようだ。

見る―見られる関係

一緒に公園内を歩きながら、目についたものについて次々と解説してくれた。「気持ちいい場所には留まりたくなるでしょ。でもここには対面で座ることができる空間が一つもないんです」と言いながら、噴水周りに座る人たちを観察する。中には縁石に器用に寝転がるおじさんの姿も。噴水に向かって椅子を置けば、周辺で会話のきっかけが生まれる。そうすることで座っている人たちの意識も変わるのだとか。

「公共空間には「見る−見られる関係」が重要。誰かに見られている感が希薄になると、似たような人しか集まりません。多様性のある広場は、少しだけおしゃれをしてでかける空間ともいえます」。なるほど、たしかに真昼間から酒を飲んでいても、パリの街角でワインを飲むおじさんがかっこよく見えるのは、彼らが見られることを意識しているからなのかと納得。「酔うために飲む人でなく、語り合うために飲む人は歓迎」というのが広場ニスト流だ。「富山ではワンカップおじさんも広場に通ううちに、酒の量が減って笑顔が増えたんですよ」と広場の効果を教えてくれた。

ひとりで居るということ

ところでどうして広場って大切なんでしょうか。「人や物が集積するまちには余白の空間が大切なんです。風や日差しや喧騒を感じながら、いろいろな人が一緒に居ることができる場所。家族や学校といった所属と関係ない人との関係を作ることができること。都市の価値はそこにあると思います」。

でも、そんなに色んな人に話しかけられたり、誘われたりすると正直めんどくさくないですか。「たしかにそうですね(笑)。だからこそ、独りじゃないところで一人になれるような場所というのが、いい広場の条件かもしれませんね」。飛んで来た帽子を拾う。毎日同じ時間に見かける人がいる。目があったら少しだけ口角を上げる。広場にはそんなドラマチックな予感のする場面が満ちあふれている。


富山での広場づくりの経験をまとめた広場ニストの入門書『にぎわいの場 富山グランドプラザ-稼働率100%の公共空間のつくり方』(学芸出版社)