フード風土 53~55軒目 アメちゃん/天遊/星屋

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。
取材・文=松本創(本誌)

一日三食、尼崎あんかけチャンポンの旅。

54軒目 天遊
東難波町5-8-19 TEL:06-6481-2216 尼崎チャンポン650円

尼崎にはかつて「ちゃらんぽらん」という漫才コンビがいたが、ここ最近、街で盛り上がっているのは「チャンポン」だと、元漫才師の市職員に教えられた。全店を食べ歩き、「キングマスター」に認定されたというから、彼の入れ込みようは「ちゅーとはんぱ」ではない。

高度成長期、九州から来た工場労働者が多かった尼崎では、スープにとろみをつけたあんかけのチャンポンが人気だった、という説がある。故郷の味をアレンジした、具だくさんで腹持ちのいい一品。これを「尼崎あんかけチャンポン」と名付け、全国にPRしようという動きが数年前に始まった。現在、参加店は25店。代表的な3店を朝昼夕と食べ歩いてみた。

1軒目の「アメちゃん」は創業51年、家族で営む中華食堂。2代目の雨田賢一さん(43)は、「チャンポンといえば、うちでは昔からこれ。あんかけが珍しいと言われても、最初はピンとこなかった」そう。鶏ガラや豚骨に加え、削り節や昆布の魚介系だしを使うのは、父の暢也さん(71)が、もとは和食の板前だったから。「近くの工場の人が飲み帰りに締めの一杯を食べに来ることも多いので、あっさり塩味がちょうどいいんです」

2軒目の「天遊」は、醤油のきいた鶏ガラベースのあんかけ。生粋の中華職人である濱田共範さん(56)が、本場の「ダールー麺」というあんかけそばから考案した。通称「尼チャン」。長崎出身だった師匠のチャンポンを研究した「長チャン」と並ぶ、22年前の開店当初からの看板メニュー。「最近は宣伝効果か、尼チャンの注文が多いね。食べ飽きへん味やって」。ニンニク風味のピリ辛天津麺に進化させた「泥チャン」も要注目。

3軒目の「星屋」は、あんかけと普通のスープの上下二層構造が特徴。赤星典秀さん(61)が、長崎出身の父と相談し、関西人の口に合う味を探求した。それが魚介系の和風だしをきかせたスープだが、上にあんをかけるのは、渋る父を説得し、赤星さんが考えた尼崎流。「下のスープが父、上のあんかけが私。この二層構造がわが家の歴史みたいなもんです」の言葉に感無量。この感動と大量の具を鍋のように数人で分け合いたい。

53軒目 アメちゃん
塚口本町3-29-23 TEL:06-6421-0488 チャンポン780円
55軒目 星屋
七松町1-3-1-122フェスタ立花南館1階 TEL:06-6416-4374 尼崎あんかけチャンポン980円