平成駅前風景 ホップと共に去りぬ

公社住宅上から南西方向を撮影。麒麟麦酒尼崎工場(潮江1丁目)。工場手前の畑のように見える空間は駅前駐輪場と思われる。写真提供:尼崎市立地域研究史料館

上の写真とほぼ同じ場所に位置するアミング潮江マンションの6階から南西方向を撮影。

平成を通じて最も風景が変わった場所は、奇しくも昨年「本当に住みやすい街大賞in関西」で1位に輝いたJR尼崎駅周辺だろう。上の写真は平成元年11月に撮影された尼崎駅北側の様子。駅舎は平屋で、狭くて暗い地下通路をこちらに抜けてくると、周辺にはキリンビール工場が醸し出すむせるようなホップの香りが漂っていた。

当時工場では毎年、工場を地域に開放して見学会や試飲イベントも開催。屋台での破格のビール販売もあり、どんだけ飲んだらこうなるのかというほど泥酔するおっさんの姿が、駅前で目撃されたのも今ではありえないような思い出である。

ご近所には工場に勤める人も多く暮らしていたが、平成8年に工場は三田市への移転に伴い操業を停止。翌年には東西線が開通し、尼崎駅は新快速が停車する一大ターミナルへと変貌をとげ、ビール工場跡地では大規模な再開発事業がすすめられたのだった。

駅前のホテルの愛称「ホップイン」は、かつてビール工場があった名残りだったが、昨年「ホテルヴィスキオ」へとお色直し。かつてビールのまちだった痕跡が失われてしまった年に「本当に住みやすい街」に選ばれたのは、なんだか嬉しいような悲しいような奇妙な感慨がある。