THE 技 動きを制するのが「鍵」

ものづくりのまち尼崎に息づく匠の技の数々。最先端技術、職人技、妙技、必殺技…。
アマから繰り出されるワザに迫る

尼崎城と一緒に尼崎藩のヤリも復活。尼崎藩の槍術を復活させようとしている石川哲也さん(53)を訪ねてサンシビックへ向かった。

石川さんは、20代半ばから槍術をはじめた熟練者。槍の「技」を調べるため、さまざまな古文書を読んでいた時、かつて尼崎藩の槍術に「本心鏡智流(ほんしんきょうちりゅう)」があることを知った。「本心鏡智流」は、江戸時代、諸藩に広く採用されていた流派で、明治維新後の軍隊の近代化により途絶えていたもの。しかし現在も古文書は残されていて、読むと技のことが詳しく書かれている、そこで、ぜひ復活させたいと研究調査を進めた。

槍術は「槍を見れば流派がわかる」と言われるように流派が分かれ、大きく「直槍(すやり)」「十文字槍」「鍵槍」「管槍」の4種類に分けられる。

「本心鏡智流」はL型の鍵がついた「鍵槍」を使う流派で、鍵で相手の攻撃をねじ伏せることができるのが強み、しかし、突く時鍵が引っかかったり、つい掛けようとして突くことを忘れがちになったり。必ずしも他の槍よりも優れている訳でなく、槍の長所、短所に合わせた技が重要。

持ち方は、左手で槍の真ん中あたりを支えて、後ろに伸ばした右手で操作。テコの原理で力はそれほどいらない。そのままビリヤードを突くように押し出すと突き。真っ直ぐ早く突くことができる。そのような基本動作をわかりやすく丁寧に指導。もっと身近に参加してもらえるよう、もう少し軽い槍も探しているとのこと。

「熟練しているから必ず強く優れている訳でなく、それは精神性を重んじた武道の話、武術は戦に勝つための軍事技術、短期間に効率的に強い者を作り出す術なので」と話す。

「本心鏡智流」の復活は始まったばかり、練習者は10名ほど。今、術を学べば効率的に最強の十傑になれる。

本心鏡智流槍術

稽古はサンシビック尼崎などで不定期開催。興味ある方は masazanekun@yahoo.co.jpまでお問い合わせを。


取材と文/岡崎勝宏(おかざきかつひろ)
アマレスラーとしてブレーンバスター特訓中。凶器に槍を使う悪役(ヒール)も悪くない。