サイハッケン 関西の「朝の顔」は尼崎から通勤していた。

明日誰かに話したくなる尼崎南部の知られざる話題をご紹介。情報も募集中!

©朝日放送

朝おき太くん

1979年から続く朝の情報番組の定番「おはよう朝日です」で、1982年のデビュー以来、関西のお茶の間で愛され続けるおきたくん。ロケ用ヘリコプターにかかれたイラストのうさぎがベースになって誕生したため、耳がプロペラのように横に広がっている。ということは意外と知られていない。

その人の朝は早い。毎日午前5時過ぎに尼崎の自宅を出て、6時前には現場に到着する。82年にデビューしてから36年もそんな生活を続けている。スタジオ入りすると挨拶もそこそこに今日のニュースを確認し、本番へ。細かな打ち合わせはしない。番組が終わると仲間と朝食を取り、そのままミーティングへ。スタッフのなかでは1番の古株で、いつの頃からか、皆から「師匠」と呼ばれるようになってしまった。

かつてはロケにもよく出かけた。初めてのおつかい企画で少年と一緒に九州に向かったものの、台風の直撃を受け、新幹線に12時間も乗り続けたことも、今となってはいい思い出だ。他の動物との共演は鬼門だった。子グマにかじられたり、牛に糞をひっかけられたり、羊にからまれたりと散々な目にあった。どうやら見た目のインパクトに動物が驚いてしまうようだ。そうした経験をふまえての奈良公園でのロケで、放送開始2時間前から現地入りし、鹿とお友達になれたのに、ディレクターの「本番2分前〜!」の大声で皆逃げてしまった時のショックは忘れられない。

彼が他のキャラクターと大きく異なる点は、事件や事故を扱う番組に出演していることだろう。実はニュース内容に応じて仕草や、動作の大きさ等をアレンジしており、場合によっては出演しないこともある。

番組出演当初は着ぐるみの性に倣って「目立ってナンボ」だったが、次第に報道番組ならではの立ち位置を考えるようになった。たとえば暗いニュースが続くと朝から憂鬱になるが、自分はその時の緩衝材のようなものである。決して目立ってはいけないが、毎日出続けることの意味は大きい。災害後に番組に戻ると「日常が返ってきた」と声をかけられる。画面に映る彼は、誰がみてもホッとするいつもの一コマなのだ。

キャラクターといえども、最後は人間性がモノを言う。彼は人知れず空気を読み、体全体でニュースを読む。そして、やはり人知れず二日酔いのしんどさと戦う彼の姿は人間味に溢れている。


取材と文/永井純一
神戸山手大学准教授