おやつの現場

放課後の天国へ

お菓子がずらりと並ぶ店内は見ているだけでも楽しい。その数なんと1000種類。

親の買い物にしぶしぶ連れられた幼児も、郵便局の前では思わずテンションがあがるという。杭瀬交差点を少し北に入った路地にある「海南堂」は、まさに子どもたちの天国。放課後には小学生がおこづかいをにぎりしめて集まる。和歌山から尼崎に出てきた義父が掲げた菓子問屋「海南堂」の看板を守るのは、2代目店主の立川一重さん(76)。「淀川から武庫川までに昔は200軒はありました」と、まちの駄菓子屋さんに商品を卸してきた。かつては卸売専門だったが、店内のお菓子の箱を見た子どもたちからの「おっちゃん、あれちょうだい」というリクエストにこたえ、箱をばらしているうちに、いつのまにか駄菓子屋さんになっていたという。おこづかいと相談しながらおやつを選ぶ子どもたちを見守り、カップ麺にお湯をそそいでやったり、とにかくやさしい立川さんだが唯一叱ることがあるという。「おごってもうたらあかんで」。子ども同士に貸し借りの関係を作らせたくないという、立川さんの言葉は大人にも響くだろう。

店番には立川一重さんと娘さんの千津子さん、孫の十誉子さんも。
立川さんにお湯を入れてもらって店先で食べるカップ麺が一番人気。

杭瀬海南堂 杭瀬本町2-3-9 8:30~7:00頃 日祝休

店先に並ぶ故郷の味

平置きされたお菓子が、三和本通商店街の通りを彩る「お菓子の白光堂」。

昭和28年の開業当初と変わらず、あられやおかき、昆布やピーナッツを一斗缶で仕入れ、食べやすい量に小分けで販売している。今では珍しいスタイルのお菓子屋には、量販店ではお目にかからないものや、地方出身者なら「懐かしい!」と思わず買い占めてしまう郷土菓子が並ぶ。「問屋さんがうちで売れそうなお菓子を持ってきてくれます。流行品よりも、昔ながらの味を置くようにしていますね」と話す2代目の高下光永さん(写真左)。なじみの問屋が廃業しても、地方のお店に直接連絡を取り、仕入れるのだそうだ。中でも目を引いたのは「動物ヨーチ」。コアラやパンダの形をしたビスケットに、緑や赤色などカラフルな砂糖が塗られている。話題のアイシングクッキーともちょっと違うようだが、今も昔も子どもが喜びそう。店先では「このお菓子固い?」と自分の歯の相談をするお客さんも。対面でお菓子を買えるのも白光堂の醍醐味だ。見ているだけで楽しい、ちょっと懐かしい郷土菓子に出会える場所だ。

今年創業65年を迎えるお店は三和本通で最も古いお店の一つ。
店先には往時のにぎわいを思わせるバケツレジがぶらさがっている。

お菓子の白光堂 建家町39 9:00~18:00木休