なぜ尼崎には軒先ホルモンが多いのか。

3つのアーケードが集合する三和の南一帯に、味わいの異なる3つの軒先ホルモン店が点在するのはなぜか。その謎にせまった。

かごもと
神田南通2-44-2 9:00~18:00 火休
100グラム300円。甘辛い味のタレが食欲をそそる。

1軒目は「国産牛ホルモン専門店かごもと」。家庭の焼肉にとどまらず、焼肉店も仕入れで使うなどプロからの信頼も厚い。店先では牛の大腸、小腸、赤セン、スジ、シマチョウ、コテッチャンなど9種類が鉄板で焼き上げられている。配合は社長しか知らないという秘伝のタレを、その場でかけていただく。店長の門荘太さんによると「見栄えを一番にと、白もの、赤ものをまんべんなく入れてます」とのこと。ホルモン密集地帯の理由については「肉体労働の人が多く、仕事で疲れた体をホルモンとビールで癒してたんでしょう」というのが門店長の説だ。


鹿児島屋
玄番北之町21 10:00~19:00 火休
1パック320円。店内で座って食べることができる。

続く2軒目「鹿児島屋」。アーケードの南、大衆酒場の趣きある店先では、こちらは“豚”の腸と肺を味噌と醤油ベースのタレで煮込む。店名に違わず、九州や沖縄出身の客が多いのだとか。「お義父さんが沖縄出身。昔からホルモンの店が多かったと聞いているが、はっきりした理由は分からない」と2代目の妻・武富美由紀さんは話す。


栄屋商店
玄番北之町7 9:00~18:00 お盆・年末年始休
100グラム160円。甘いタレはおやつとしてもピッタリ。

最後に新三和サンロード入り口の「栄屋商店」を訪ねた。こちらの具材は、豚の大腸、小腸、肺に加えて、ごくたまに牛肉が入っていて嬉しい。「うちのお客さんは子どもからお年寄りまで。こないだなんか6カ月の赤ちゃんが食べてたくらい。それだけ柔らかく煮込むんです」と3代目の大城光子さん。昔は近辺に工場が多く、仕事帰りビール片手に立ち寄る客が多かったという。この日も、店先の鉄板の端をカウンター代わりに一杯ひっかける70代の男性の姿が。


尼崎の町工場を支えていた労働者。その胃袋を満たしてきた三和のホルモンは、今もなお食べ歩きや子どもたちのおやつとして、私たちの胃袋をつかみ続けている。