3時の働くあなた
尼崎郵便局
確実にスピーディーに郵便物を届けるために導入された区分機は、郵便番号と宛名を読み取り、届け先を見えないバーコードとして印字する大型機械。葉書や封筒がものすごい速さでラインを流れる姿に圧倒される。
尼崎郵便局は眠らない。いや、眠れないのだ。阪神尼崎駅に近い尼崎郵便局の郵便番号は660。「地域区分局」である尼崎郵便局には、郵便番号が66で始まる全ての局の郵便物が一旦、ここに集められ、各地に送られていく(ゆうパックは別ルートがあるらしい)。
66で始まる郵便局とは、西宮、伊丹、川西、宝塚から三田、篠山、八鹿、豊岡、香住、浜坂まで。中国自動車道から舞鶴自動車道へ乗り換え、春日で一旦降りて豊岡自動車道を通って日本海まで、実に兵庫県の約3分の1をカバーする局なのだ。そのため、尼崎郵便局を通過する郵便物は数にして、平日で1日約6万通。年賀状が加わると1日100万通を超えたこともあるのだそうだ。
作業場に入ると、農作業に使われる巨大な水色のプラスチック製の籠がいくつも台車の上に積み重ねられ、所狭しと並べられた籠の中で、大量の郵便物が仕分け、配送を待っていた。建物の南面には全13カ所のトラック発着場があり、うち常時9か所を使用し、ここから比較的郵送量が多い西宮で日に8~9回、豊岡でも1日4回はトラックで運ばれていく。
素早く、確実な配達を技術的にサポートしているのが、人の目では見えないバーコードだ。尼崎郵便局のような地域区分局では、全ての郵便物に郵便番号7桁のバーコードを張り付ける。特殊なインクを使っており、パッと見では気付かないものの、斜めから光で照らすとほのかにピンク色をしている。尼崎郵便局を出た郵便物はそのバーコードを使うことができるため、各郵便局の配送作業が効率化されるというわけだ。
このバーコード。定形郵便は機械が郵便番号を自動で読み取り、貼り付けてくれるが、達筆な文字で書かれた郵便物は人間が読み取り、手入力しなければならない。9月は郵便物が少ない時期とはいえ、この日の夜は1台の機械を二人の方が夜を徹して、作業をするのだそうだ。ちなみに10月を過ぎると年末商戦用のダイレクトメールが増えるため、これからお正月までが1年のなかで最も大きな山場となる。
各地から尼崎郵便局へトラックの最終便が到着するのが午前2時。天候や交通事情でいくら到着が遅れても、日本海側や西宮に向かう午前5時10分の始発便に間に合わせるため、午前3時頃が最も忙しいという。
この日、話を伺ったのは郵便部副部長の前川博俊さん。午後10時に出勤し、各局から尼崎郵便局に向かう車の運行状況を確認後、午前3時前に現場の応援に入り、4時半には現場を離れ、午前9時まで日報などの事務作業をこなす。
「メールもいいけど、やっぱり手紙を書きましょう」そうコメントを残した後、すぐに作業へ戻られた。
この日のお夜食
「なし」
「若いときは自販機のカップラーメンを食べたり、弁当を食べたりしてましたけどねー」と前川さん。食事後の消化されていない状態だと、立ったり座ったりする作業でお腹が苦しくなるのだとか。
取材・文/立石孝裕(たていしたかひろ)
尼崎「中央」郵便局は存在しないそうです。