Why EDO people!?代表作ツッコミ紹介 no.2

江戸時代の色恋沙汰を描いた「世話物」代表作のあらすじを超訳。今様の恋愛事情と照らし合わせ、ツッコミを入れながらご紹介。

超訳あらすじ no.2
冥途の飛脚 [1711年(正徳元年)]

筋金入りのダメンズとの逃避行

奈良出身のアラサー男子、忠兵衛くんは、大阪の飛脚屋の養子だけど跡取り息子。カノジョは遊郭の人気遊女、梅川ちゃん(19)。しかしリッチなお客に身請けされるかも、という噂が。

これに焦った忠兵衛くん。飛脚屋に届いた友達の八右衛門くん宛のお金(およそ500万円)を、身請けの手付け金として使い込んでしまう。「ごめん、すぐ返すから」と八右衛門くんに伝えると「ええよ、しばらく待ったるわ」と返済の約束を交わす。

その後、(飛脚屋なので)急ぎで武家屋敷に3千万円の大金を届ける仕事が。しかし、それも懐に入れてついつい彼女のお店に行ってしまう。おいおい。

お店では、友達思いの八右衛門くんがみんなに「あいつ梅川ちゃんにハマりすぎてヤバいから、もう別れさせたってや」と頼み込んでいた。それを立ち聞きしていた忠兵衛くん。「もうええわ。八右衛門くんには頼まん」とカッとなって思わず懐の大金の封を切って、借りていた500万円を投げ返した。

「それ武家屋敷のお金とちゃうん? 封切ったら死刑やで」と梅川ちゃんに言われても「ちゃうねん、これは養子に来た時に親がくれたお金やねん」と嘘をついて、残りを身請け金として支払う始末。やれやれ。

最初は「うち、嬉しい」と喜ぶ梅川ちゃんだったが、お侍の金を横領した事実を知り泣きじゃくる。「もう逃げるしかない」と二人は、忠兵衛くんの故郷の奈良へと向かう。

幼馴染の家で隠れていると、たまたま前を通った忠兵衛パパが足を滑らせて転ぶ(奇跡!)。思わず駆け寄り介抱するやさしい梅川ちゃん。勘のいいパパは息子の嫁と気づき、「早よ自首し」と諭す。結局捕まり連行される二人を見守るパパ。パパの悲しむ姿を見たバカ息子はここではじめて後悔するのだった。

“リッチなお客に身請けされるかも”

まるで売り物ですやん!

遊女たちのお店との契約期間(年季)はおよそ20年。年季が明ける前に退職するには、お店に身請け金(前借り借金の残額)を払う必要があります。お客の中でも自分が好きになった人に身請けしてもらうのは遊女の夢。白馬に乗った王子様の登場を待ちわびているのです。

“ついつい彼女のお店に行ってしまう。”

救いようのないダメ男やな

人間ドラマを描いた近松の世話物作品の多くは、実際の事件をモデルにしています。江戸時代の人にとっての再現ドラマのようなものなので、ダメさ加減も誇張されているのでしょう。観客もきっと「おいおい、アカンやろ」などとツッコミながら観ていたのでしょうね。それでも、忠兵衛は近松史上最高(いや、最低か)のダメ男だと思います。


ツッコミへの解説コメント
近松研究所所長 乾安代さん