Why EDO people!?代表作ツッコミ紹介 no.3

江戸時代の色恋沙汰を描いた「世話物」代表作のあらすじを超訳。今様の恋愛事情と照らし合わせ、ツッコミを入れながらご紹介。

超訳あらすじ no.3
心中天網島 [1720年(亨保5年)]

かわいい彼女と素敵な奥様の三角関係

遊女の小春ちゃんと紙屋の治兵衛くん(なんと既婚者!)は「いつか一緒に暮らそうね」と約束するほどの熱愛ぶり。ある日、お侍のお客からなぜか突然「治兵衛と別れたいなら手助けしよう」と言われた小春ちゃん。「実は彼とは別れようと思うの」と思わずカミングアウトするのを、立ち聞きしてた治兵衛くんはカッとなって小春を刺そうとする。こっわ。しかしそのお侍さんに取り押さえられ、店先に縛られる治兵衛くん。

なんと侍の正体は、治兵衛くんのお兄ちゃん。弟の恋狂いをやめさせるため、変装までして様子を見に来ていたのだった。「ええかげん別れや」という兄の説得に、二人はついに別れることとなった。

妻子持ちの治兵衛くん。妻のおさんちゃんは、紙屋を切り盛りする働き者のすてきな奥様だ。にもかかわらず、後日、小春が身請けされる噂を聞き、治兵衛くんは家のコタツで泣きじゃくる。「だって小春ちゃん、「他の人に身請けされるくらいなら死ぬ」て言うてたもん」と妻に打ち明けると、おさんもまた真相を語り出したのだった。

実は二人の心中を心配し「夫を死なせたくないので別れて」と小春に手紙を送っていた。「別れようと思っていた」のは、おさんの手紙を読んでいたから。

これで彼女に自殺させると、女同士の義理が立たない。「こうなったら、小春ちゃんを身請けしたげて」とおさんは手付金を工面しようとする。そこにおさんパパが登場。遊郭通いの婿に怒り心頭、かわいい娘を連れ戻して行ったのだった。

女房と別れさせられ、身請けもできなくなった治兵衛くん。当初の約束通り小春ちゃんと心中することに。しかし、小春のおさんへの義理立てから、二人は別々の場所で息を引き取ったのだった。

“治兵衛くんは「いつか一緒に暮らそうね」と約束”

ゲス不倫じゃないですか!

江戸時代は、男は甲斐性さえあれば何人と関係を持ってもよかったんです。なので、治兵衛くんに「不倫してる」感覚はなかったのでしょう。「だって好きなんだもーん」ってくらいでしょうね。本当にバカですね。

“これで彼女に自殺させると、女同士の義理が立たない。”

妻と不倫相手の泥沼は?

おさんは「大事な旦那様のことを心から愛してくれてありがとう」と小春に対しても思うほど、治兵衛を愛していたのでしょう。小春が死ぬとその愛する旦那様が悲しむ、と思い身請けさせようとする一途な姿が、今も心を打ちますね。


ツッコミ鑑賞のすすめ

近松の世話物は、「ダメな男といい女」の組み合わせが定番です。「いるよねーこういうダメな男」と言いながらも「ダメな男ほどかわいい」というのも世の常。そんな男との縁から身を滅ぼす女の物語の数々は、つっこみながら見るのがおすすめです。出会いはコワい。


ツッコミへの解説コメント
近松研究所所長 乾安代さん