メガネ、メガネ… 今回のお題は【柵】saku
尼崎で見つけた気になる光景。ほぼ妄想
写真と文:山下祐生
写真と文:山下祐生
「柵」。このギュッと詰まった、縦横に交わる線。漢字を眺めるだけで何か湧き上がる願望がある。この欲求不満は何だ、もう少し近づきたい、拡大して見てみたい。そうだ私は覗きたかったのだ。この隙間、この「冊」の字の細く区切られたその隙間を。
眼鏡人語
柵は境界だ。柵を越えては行けない。でも透けている、見えている。近づくぐらいいいじゃないか、鼻先を突っ込んで覗くくらい許しておくれよ。私だってイイ大人だ、覗いていい柵と覗いちゃいけない柵の見分けぐらいつく。たぶん。「覗く」なんて言うとちょっと悪い事をしてるような響きだがそうじゃない。あれだ。動物園の檻のあっちとこっち。デパートのショーウィンドウのあっちとこっち。このあっちとこっちの届かない歯がゆさと安心感。それを楽しむという事だ。この距離感には人をむりくりドキドキさせる力がある。「眺める」なんてシュッとしたもんじゃない。「覗く」とはもっとがっついた距離感だ。覗いている人は夢中だ、隙だらけだ。いいじゃないか、恥ずかしがるんじゃない、かまえるんじゃない、ノーガードだ、脇の下はスースーでいい、股の下を猫が通っても気付かないくらい覗けばいい、覗いてやるさ、覗いていい柵を。
【まちのメガネ】やましたゆうき 尼崎と東京を行き来する31歳。センベロよりも二千円で満腹まで辿りつくニセンベロマンが好き。