サイハッケン 魚が名物の電気屋と傘で評判の本屋が並んでいる。

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でんきの大島
立花町2-3-13 TEL:06-6422-3453

定番のタイ、サゴシのほか、春はヒラメ、カレイ、タコ、冬は牡蠣。ほかにもアジ、イカ、ハギなど様々。天候や仕事の関係で魚が来ないときも。

小林書店
立花町2-3-17 TEL:06-6429-1180

由美子さんはいつも昌弘さんの言葉に、背中を押してもらっているという。「旦那さんは鵜匠で、私が鵜やねん!」と笑う


JR立花駅の北にのびる商店街は、書店、煎餅屋、喫茶店、八百屋、パン屋…古くからのお店も元気だし、新しくできたお店もちゃんと定着して、新旧入り混じって活気がある。

アーケードを抜けて、しばらく歩いたところにあるのが「でんきの大島」。決して看板に嘘はないのだが、こちらでは毎週月曜に店頭に並ぶ舞鶴直送の鮮度バツグンの魚が評判で、いつも夕方には売切れてしまう人気ぶり。店主・大島久司さん(60)が、高齢のご両親が住む、舞鶴の漁港・佐波賀へ帰るついでに、友人の定置網から仕入れてくるのだ。その大島さんが「井村さんがいないと魚はお休み」というぐらい頼りにしているのが、長年仕事を共にする井村由美子さん。どんな魚も捌く名人だが、特製アジフライ、梅干しなど季節の惣菜や保存食が並ぶこともあり、これがまた美味しい。

一方、創業66年を迎える「小林書店」は、阪神大震災を期に、あの「Waterfront」の傘を販売する日本で最初の書店となった。店を切盛りするのは、先代の父の跡を継いだ小林由美子さん(68)と夫の昌弘さん(72)。30代前半、昌弘さんは大手企業のサラリーマンを辞め、2人で商売をはじめた。震災で住居兼書店の壁が崩れたとき途方に暮れながらも「店を助けてくれるものを置かなアカン」と思ったことがきっかけだった。傘と本が10坪ほどの店内に並ぶ風景は、38年間にわたる夫婦のアイデアと奮闘の歴史を物語る。

面白いのは、この2軒が30mほどの距離にあること。魚が買える電気屋と、傘も売る本屋。そのいきさつはそれぞれで、何というか、商店街は人でできている、という感じがする。


取材と文/黒田裕子
編集者。「でんきの大島」の隣に5年住み、この春、魚の捌き方を教わった井村さんの近所にお引越し。