尼とスナック

市内各地で今夜もネオンが灯るスナックの数は208軒。電話帳をひたすら数えた尼崎スナック事情にせまります。

ピークはバブル期1362軒

ずばり尼崎で最もスナックが多かった時代は、バブル景気絶頂の1988年で1362軒。バブルが弾け、阪神淡路大震災後に1000軒を割り込み、その後は減少の一途をたどっている。

大阪神戸に並ぶスナック群

で、現在の208軒は多いか少ないのか。大阪、神戸と比べてみよう。1km2あたりの軒数は尼崎市4.1軒に対して、大阪市7.17軒、神戸市1・27軒。山林が多い神戸が少ないのは当然だが、尼崎と同じ市街地が市域を占める大阪のスナック密度たるや。

人口千人あたりの軒数では、尼崎市が0.46軒、大阪市は0.58軒、神戸市は0.58軒と並ぶ。人口あたりの軒数では、大都市大阪神戸に引けを取らない。

「尼崎市スナック分布図」
iタウンページ2017年 業種分類スナックより抜粋し作成

ざっと分布図を眺めると、タウンページに掲載されていないお店も多数。となると、実態は208軒をゆうに超えると推測される。

ホットなのは阪神尼崎、立花

分布をみると、やはり繁華街に密集するスナック。しかし駅から離れた、西難波町 や浜などにも出店が目立つ。『スナック研究序説 日本の夜の公共圏』(谷口功一 スナック研究会編)によると「スナックの件数が多い地域ほど刑法犯認知件数が少な」く、「明るいエリアにあるスナックよりも、暗いエリアにあるスナックの方が」その影響が大きいそうだ。つまり、人気のない通りにあるスナックはまちのかがり火。おとな110番の店といえるだろう(ほんまか)。

バー? スナック? クラブ?

「尼崎市におけるスナック軒数の推移」
NTT電話帳より業種分類スナックをカウントし作成

今回は、尼崎市立地域研究史料館で戦後の大衆文化に詳しい西村豪さんに協力いただき、古い電話帳を調べたが、スナックの軒数を把握するのは困難だ。「時代によっても異なるし、スナックとは何かを定義すること自体が難しいんでしょうね」と西村さん。

例えば1980年~84年版では、スナックは喫茶店やバー・クラブの業種欄に混在し、中には珈琲店やバーも含まれていて正確な数が把握できない。86年版以降はこうした混在は減り、スナックという独立した業種欄ができるものの、なぜか「喫茶スナック」「食堂(スナック)」「スナックバー」の3つの欄に分かれている。店名を見る限りは、分類の基準は不明である。

夜の社交場は高級なクラブ、ラウンジ、気軽なスナック、とぼんやりした印象はあるが、その実態は時代で移ろいやすいということだけはわかった。