三和ブティック物語

三和本通商店街にある[寸法直しファミリー]。ここはかつてママたちに愛されたブティック[上田屋]の後継店。店主の上田さん(85)に話を聞いた。

三和本通商店街の南端。カラフルなドレスが目を引く店先

「今もママさんがお店に来てくださってますよ。」
尼崎のスナック事情にとても詳しい上田さん

[上田屋]は1953年、肌着屋として創業。「下着のスリップを並べたらよう売れてね。女らしいものが売れるんやなと思ったんです」と、上田さんは72年頃からドレスの販売をスタート。当時はキャバレー全盛期、百万弗やナナエ、クラブ阪神といった店で働く女性が殺到した。「丈の長いのがよう売れました。最新の流行をつかむため、北新地にホステスさんのドレスを見に行って研究しました」という上田さん。さらに生地を仕入れて縫子を雇い、オリジナルドレスを販売するようになった。「最新のドレスが安く買える」という評判で、尼崎だけでなく大阪からもママが訪れた。

80年代に入るとキャバレーの売れっ子ホステスたちは、ひいきの客を連れて自らのスナックを開業したという。「あの頃はスーツスタイルが人気やったね。若い子はミニが多かったかな」と振り返る。ドレスの人気色を聞いてみると「黒、白、赤」だという。「誰もが似合う黒が人気、スパンコールをいれてね。自信のある可愛い子は赤がよう似合うね」。

「バブル崩壊や阪神大震災も大変やったけど、飲酒運転の取り締まりが厳しくなってからが特にお客さんが減ったんとちゃうかな」とスナックの隆盛を分析する上田さん。ブティックは2012年に閉店し、現在は洋服の直しをメインに営業する。最近はインターネットで買ったドレスをここで直すママが増えているのだとか。