神主のぶらり街歩き 連載第5回 センタープールで神頼み

健康のため、ウォーキングを始めた。でもただ歩くだけでは面白くない。そこで、神主の目でまちを観察することにした。

ウォーキングを継続するためには、用事を作るか、目先を変えることが必要。そこでいつもは出屋敷から阪神尼崎近辺を歩いているが、少し西へ足を延ばしてみた。

蓬川を越えると今、明倫中学校跡が大規模開発されている。このマンションは「駅近・梅近・緑近」がキャッチフレーズ(詳しくはモデルルームへ)。町の様子もがらりと変わりそうだし、完成したらまたぶらりと訪れてみたい。

そしてその先に尼崎センタープールがある。私、レース関係に全く興味がないため、こんなに近くに住んでいてもなかなか行く機会に恵まれなかった。そこでウォーキング中にもかかわらず、100円を払って入場してみた。入ってすぐ右手の救護室横には「荒熊大明神」のお社がある。お参りされる方がおられるのかしばらく見ていると、予想紙を片手に一生懸命に拝んでおられる方が一人。本当に一生懸命だった。

私もお賽銭を入れ、二礼二拍手一礼。「尼崎センタープールが儲かって、尼崎の財政が潤いますように…」とお願いしたいところだが、我が身可愛く、「1レースだけ買う舟券が当たりますように…」と“神頼み”してみた。

“神頼み”。神社にご祈祷に来られるほとんどの方が、お願い事に来られる。でも私たちの先祖って、お願い事より健康であることなどへの感謝の気持ちを神さんに伝えることを大切にしてきた。人間関係でもそうだが、お願い事ばかりでは良い関係も結ばれない。つまり「苦しいときの神頼み」だけでは神さんとの良い関係も結ばれないのだ。

さて、競艇場の中は見るもの全てが初めてで、お上りさん状態。きょろきょろしながら券売機で舟券を購入し、レース開始を待った。隣の30歳前後の女性は私の舟券を見て「これではあかんで!」という表情。案の定、かすりもせず、舟券は紙くずに…。「荒熊大明神さん、尼崎市の財政のため私も協力いたしました」と神前に報告し競艇場を後にした。


江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンな南部のお社きふねさん(貴布禰神社)第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。