フード風土 22軒目 串むら

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。

あっさり串カツ キャラは泥ソース級

串カツは110円から。大海老(330円)、さざえハーブバター、かにパン(各210円)、牛ロース、タコ、ミノゆずこしょう、そら豆とベーコン、イカ海苔(各170円)、タマネギ、うずら(各110円)など。おまかせコースもある。

告白するが、ウスターにせよトンカツにせよ、ソースというものが実はあまり得意ではない。下町フード巡礼のこんな連載をしながら、そりゃないやろと言われそうだが。お好み焼きやタコ焼きなどのいわゆる粉モンは、それもまたよしと思えるのだけど、できればすべてポン酢かしょう油か塩でやらせてもらいたい、というのが本音だ。

だから、「串カツにはソース、の常識を打ち破りたいんですわ」と語る、こういう店はありがたい。阪神武庫川駅から線路沿いに歩いた商店街にある「串むら」である。この店の串カツは「何も付けない」のが基本。素材そのものと、衣に付けた「そらあ企業秘密ですわ(ニヤリ)」のあっさり味だけで食わせたる、という心意気。大手外食チェーンに長年勤めた村井忠志さん(45)が昨年秋に構えた念願の店は、内外装とも杉材で統一した山小屋風で、「串カツ=下町屋台のコテコテ味」のステレオタイプを心地よく裏切ってくれる。

品書きは50種。海水で処理した大海老、牛ロースやタマネギ、うずらなどの定番もいいが、村井さんのアイデアや客のリクエストで増え続ける独自メニューがなんともそそる。さざえハーブバター、ミノゆずこしょう、そら豆とベーコン、イカ海苔……。極みは、数量限定のかにパン。カニと小芋、白身魚をすって、しんじょう(カマボコの一種)にしたものに衣を付けて揚げるという凝りよう。

それでも村井さん、「味がええのは当たり前。あとはしゃべりで勝負や」と涼しい顔。味や店構えはシュッとしていても、隠しようのない(隠す気もない)キャラの濃さは、やはりアマの南部の特性か。取材に訪れたまだ早い時間、カウンターを埋めたのは、開店前の腹ごしらえに来たスナックのお姉さん2人組、川向こうの西宮からパチンコ帰りにやってきた団塊世代(ぽい)夫婦、この界隈で日々飲み食いしていると思しきお兄さんや市役所職員。店は新しくても、生まれてこのかたずっと武庫川という村井さんのもとには、「武庫川コネクション」ともいうべき濃い~磁場が既にできているのであった。■松本創


22軒目 串むら

武庫川町3-78
18:00~1:00 
日祝17:00~24:00
月曜・第3日曜休
TEL:06-4869-3202