R75+ 情報誌

芦屋で創刊19年。中高年の情報誌

芦屋で生まれた中高年の情報誌「にっち倶楽部」が、2018年6月、創刊20年目にして幕を閉じた。R75世代に届ける雑誌への想いを、JR芦屋駅近くのマンションにある編集部を訪ね、編集長の久野幸子さん(72)に聞いた。

編集部には読者からの手紙や絵手紙などがたくさん届いた。久野さんは「お手紙を返すこともあるけど、電話しちゃおう!ってこともよくあったわ」。

創刊は1999年。95年の阪神淡路大震災で、孤立しがちだった高齢者を元気づけたいという思いがきっかけだった。「今では大手出版社から中高年向けの雑誌が発行されていますが、当時は珍しい存在でした」と久野さん。新聞各紙でも紹介され、購読会員数は伸び、季刊で多いときには5000部を発行していた。

編集メンバーは、久野さんのPTA仲間など阪神間で暮らす6人の女性と翻訳家の夫・久野秀樹さん。購読者の開拓や雑誌の寄稿には、地元の同窓会ネットワークが大いに活躍したという。阪神間在住の文化人や高齢者福祉施設長、お医者さんなどの寄稿や連載が紙面を彩る。読者投稿ページも充実していて、エッセイや俳句、絵手紙コーナーなどが、編集部にたくさん寄せられる。原稿や手紙のやり取りが、高齢の読者にとっての楽しみや励みになっていたのだろう。

巻頭を毎回飾った人気連載は「百歳の肖像」。100歳の人生の先輩へのインタビュー記事だ。中高年者が、さらに先達から元気や勇気をもらえる言葉がちりばめられている。久野さん自身も「お年寄りの話はいくら聞いても飽きない」と、お気に入りの連載だったという。

創刊から年月が経ち、編集部の平均年齢は70歳に。発行し続ける気力や体力の衰えを感じるようになり、今年の春に終刊を発表した。連載陣や読者から惜しむ声が多く寄せられた。「個人的には100歳越えの人生を紹介するものを作りたい気持ちも」と、意欲的な久野さん。「子どもも大人も立ち寄っておしゃべりできるブックカフェを作りたい」との構想もあったりと、にっち倶楽部のこれからの活動もまた楽しみだ。