フード風土 51軒目 武庫川渡船 バーベキュー広場

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。
取材・文=松本創(本誌)

海辺にて「尼崎の魚」を堪能する

〈武庫川河口沖には全国の釣り人たちにその名が知れ渡る名物スポットがある。通称「ムコイチ」(略)防波堤・武庫川一文字だ〉。本誌39号「武庫川のムコウガワ」特集の記事である。その中で渡船業の三代目、宮本悦男さんが語っている。「尼崎の海は汚い、ってイメージがあるかもしれないけれど、意外にきれいなんですよ」。そう、この10年ほどで尼崎の海は劇的に浄化され、魚が戻って来ている。

魚つり公園は、大人820円、子供410円。7月から10月は午前5時から午後8時まで。火曜休園。TEL:06-6417-3000

そして当連載にとって重要なのは、それらがとても旨いらしいという情報だ。「今回は材料調達からやってもらいます」と若狭健作氏に連れられて、7月半ばに訪ねたのは、尼崎市立魚つり公園である。

迎えてくれたのは、先の記事の宮本さん。尼崎の海と魚を知り尽くすお魚伝道師。もう一人は、尼崎の運河でSUPと呼ばれるパドルボードを広める岸本幸三さん。尼崎の水辺のプロたちの間では今、「武庫川フィッシュ&チップス」なるメニューをはじめ、地元の魚を売り出す計画が進んでいるという。

とはいえ、この日集まった宮本さん以外の3人は、釣りはズブの素人。大丈夫か…と思っていたが、そこはさすが伝道師。初心者向けのサビキ釣りの竿と仕掛け、撒き餌もすべて用意してくれ、おまけに糸の垂れ方、引き上げるタイミングや力加減まで懇切丁寧に教えてくれる。1時間ほどでサバ、アジ、サッパが3人で30匹近く釣れた。15~17センチ程度だが、ズブの素人衆には上々の釣果だ。

釣り上げた魚は宮本さんが調理してくれる。サバは開いて炭火で塩焼きに、アジはコショウをきかせた素揚げに。なんでもない魚がこんなにうまいかと思うが、それよりすごい一皿が用意されていた。チヌ、メバル、アコウ、ガシラ、ハネ、タコ。この時期、ムコイチで獲れるうまい魚の6種盛り。熟練の釣り人たちが「誰かにあげて」と、置いていくのだという。

「このへんは武庫川と淀川の汽水域で、魚種も豊富。大阪湾の魚として流通しているものの多くが尼崎で取れています」

「刺身もいいですが、一番は塩焼き。一晩寝かせると旨味が凝縮されて最高です」

宮本さんの魚談義に頷き、網の上の香ばしい魚をつついていると、自分まで海の男になった気分だ。尼崎の海よ、ありがとう。悦に入り、思わずつぶやいた酷暑の昼下がりである。


51軒目 武庫川渡船 バーベキュー広場

平左衛門町66
営業期間4/25~10/31
11:00~18:30 定休なし
TEL:06-6430-6519

阪神武庫川駅より送迎バスあり