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尼崎が登場する書籍を紹介。レビューを読んで本屋へ急げ!
ヒロイン桃子が尼崎出身という設定の「下妻物語」
これを書いているのはオッサンなので、「乙女のカリスマ」嶽本野ばらさんの世界からは最も遠い存在であり、尼崎がえがかれた著作「下妻物語」が映画化されたと聞いた時には、確認の要ありと思ったものの、深キョン主演の映画「下妻物語」上映館にあしをふみいれる姿を衆目にさらすことに大きな躊躇があって、逡巡するうち上映が終了を迎えてしまった。
本屋で小学館文庫を買い、こそこそと読み始めたところ、いきなり『住民の殆どは、ヤンキーか元ヤン。尼崎市民の多くは尼崎で生まれ、やはり尼崎で生まれ育った元ヤンに育てられ、当然の如く、ヤンキーになります』ときて、ああやはり尼崎はこう書かれてしまうのかと慨嘆詠嘆しつつ、読み進めるにつれて、まこと単純な友情話にひきこまれ、一気に読了、ラストで主人公桃子がダチのイチゴ助けるために原チャ持ち上げ投げつけるシーンがあり、なるほど体格のいい深キョンをキャスティングしたわけはここにあったのかと納得、こんな娘が生まれ育った尼崎というのもすてたもんじゃないな、と喜びつつも、映画がビデオになったとき、借りに行くだろうか、やっぱり恥ずかしいなと感じるのでありました。■TM
嗚呼、懐かしの昭和30年代 ドヤ街のマリちゃんがゆく
ネギおばさん、力道山の弟、元力士の校長先生、タイガースが負けると機嫌が悪い車掌…何とも個性的なメンツが勢揃い。昭和30年代の出屋敷で幼少を過ごした作者の原風景をもとに、聞き取りを重ねて描く細密なイラストと文章。毎日新聞阪神版で連載された「私のノスタルジック尼崎」からの選りすぐり40作が一冊の本になった。各話読み切りで、パラパラとどこから読んでも楽しめる。
巻末には書き下ろしエッセイとマンガ3作を収録。幼少の作者「ドヤ街のマリちゃん」を主人公に、工都尼崎に生きる労働者が描かれ、尼崎にゆかりのある作家、宮本輝、田辺聖子の知られざる過去にも迫っている。シュールなマリちゃんワールドに引き込まれ、次の作品が読みたくなる。
作者の井上眞理子さんは、昨年「尼崎相撲物語」を発表し、イラストレーター、尼崎探訪家として活躍中。「今回は肩ひじ張らずに読める、まちの物語を描きたかった。年配の人には懐かしがってもらい、若い人にはまちへの愛着を持つきっかけになれば」と井上さんは言う。■W