底なしにディープな杭瀬のネタ帳

尼崎の南東端。下町、工場、団地、商店街が渾然一体となった杭瀬のまちは、特集ページに収まりきらないほどのネタを持っている。杭瀬で代々続く商店主は「寄せ鍋みたいなまちやね」と言う。杭瀬と言えば…と一言で語り尽くせない。ここでは、そのほんの一部をご紹介。

阪神杭瀬~大物 Like A Rolling Stone

写真はイメージです

くねくねと市街地を縫うように線路が走る阪神電車杭瀬~大物駅間。プラットホームではかなりの角度で電車が傾いているのは有名な話。そんな杭瀬駅での信じられないような実話がある。

終電間際の普通電車梅田行き。阪神尼崎駅から乗り込んできた泥酔の乗客が深く座席に座り込んだ。と同時に深い居眠りに。電車が大物駅に近づくにつれて傾きはじめる車両で反対側の座席に転がる乗客。目を覚まし、不思議そうに辺りを見回しその場に座る。そして杭瀬駅へ。今度は傾斜が逆になる。笑いをかみ殺す他の乗客の中、いびきをかく泥酔客はその後車内を転がり続けたとか。

悪の手から杭瀬を守れ! ヒーロー夢の競演

アーケードの上に勢揃い

すっかり、まちに溶け込んだヒーロー戦隊は、杭瀬本町商店街北側、玩具店「いちふく」の看板。マニア垂涎のトリプルファイターに、ウルトラマンエース、仮面ライダーのまさに夢の競演。まちのランドマークとして今日も杭瀬の平和を守っている。

鹿児島、奄美、沖縄… 南国の風薫る杭瀬

ちょっと甘めの醤油と味噌、サツマ揚げ、芋の粉、幻の焼酎…。杭瀬北市場の外れにある鹿児島物産本店では、これらの薩摩モノがすべて揃う。尼崎には鹿児島、奄美、沖縄出身者が多い。昭和43年の創業当時、杭瀬周辺には工場が多く、このまちへ働きに移り住んだ鹿児島出身者は多いと田中社長は言う。

店内にずらりと並んだ調味料の数々は、そんな南国鹿児島の風土に合わせたものばかり。懐かしいおふくろの味を出すには、これらの味が不可欠なのだ。他にも魚のすり身と野菜を揚げたサツマ揚げや、入手困難なプレミア芋焼酎など、ここでしか買えない薩摩の味が並ぶ。鹿児島に行ったことがなくても店内は南国。奄美、沖縄モノもずらりと並ぶ。

杭瀬本店
ずらりと並んだ醤油は見慣れないものばかり。おすすめは刺身甘露(380円)

鹿児島物産

杭瀬北新町 1-12-6 大阪神戸にも直営店、チェーン店を展開する。杭瀬本店は木曜定休

たった20分で汗だく ゲルマニム温浴

大阪神戸から通うファンもいるほど。杭瀬市場の中で異彩を放つ空間「るるどin尼崎」にお邪魔した。「有機ゲルマニウム温浴」という聞き慣れないダイエット法。この1年で5kgも太った筆者としては、試さずにはいられない。お店に飛び込み、受付でTシャツを借りて挑む。

42度に保たれたゲルマニウムのお湯に手足を20分間つける。それだけでマラソン6km分もの汗をかくそうだ。最近走ったのは、電車に飛び乗るために走った100m。大丈夫か?おそるおそる温浴を始めると、たった5分で額に汗がにじみ、20分で全身汗だくに。心地よい疲労感に包まれ、冷たい水を飲むと運動後のさわやかな気分に。おまけに腹のたるんだ筆者の体脂肪は3%近く減少。ただお湯につかっているだけなのに…。何とも不思議な体験だが、気持ちいいのは確か。

通常20分1500円だが、初回はお試し1000円ポッキリ。リーズナブルなのも嬉しい。一度試してみる価値はある。「るるど」で癒され、帰りは市場でお買い物。新しい杭瀬の楽しみ方が浸透しつつあるようだ。

静かで落ち着いた雰囲気の店内
市場の中の隠れ家といった趣の外観ばかり。おすすめは刺身甘露(380円)

るるどin尼崎

杭瀬本町 1-16-2 06-6244-6191 日曜祝日定休 10~20時(平日午後は女性専用)

杭瀬のナイトスポット 男のプレイタウン

ネオンきらめく駅前の路地裏

阪神電車と国道2号線の間に五色横丁という名のスナック街がある。人がなんとかすれ違えるくらいの狭い路地裏に、30軒を超えるスナックや居酒屋が建ち並ぶ。駅から徒歩1分の夜の街に、終点間際までハシゴする男たちが集う。下町のナイトスポットは未だ健在。杭瀬は夜もディープなまちである。

工場建築も杭瀬名物?

初代塩野義三郎によって明治11年に創業した塩野義製薬。杭瀬工場は大正11年に発足

左門殿川沿いを歩くと、塩野義製薬のパイプが出迎えてくれる。日本を代表する製薬メーカーの主力工場が杭瀬寺島にある。「尼崎産業遺産に関する調査研究報告書」(2002年)によると、敷地内には歴史的に価値のある建物が多い。建築家ル・コルビュジェの建築を思わせる建物を外からも垣間見ることができる。建築好きもそうでない人も、少し足を伸ばして行ってみたい杭瀬のスポットである。