日常まち歩きの心得 まちの表情を感じよう

いつもは何気なく歩く通勤通学路、買物ルート… 毎日の空間を楽しむココロエ

今年も日ざしが痛いほどに暑さの厳しい日々がやってきた。季節ごとの自然環境の移ろいは風景に変化を与える。日ごろ歩いているまち並みからもその変化を感じることができる。また自然環境の変化を感じて人は住まいにも変化を取り入れている。

京都から広まった都文化では夏に障子戸をよし戸に替えるなど、「しつらい」の変化が暮らしの一部であったように、外に出ても同じように季節の変化がまちの表情をつくりだしている。

例えば暑さをしのぐには、窓を開けて風を通すだけでなく、風鈴の音や打ち水が作り出すひんやりとした空気と水の匂い。涼しいという機能と共に五感で風情を楽しむ。のっぺりとしたビルの陰より木陰から涼しげな印象を受けるのはなぜか?木々が風を受けてさらさらたてる音や葉の緑、匂いが安らぎを与えてくれるからだろう。また小さな変化が組み合わさることで、なじみの安心感を覚えたり、時折はっとさせられることもある。

これらの季節の変化に時間、天候の小さな変化が重なり、層となって繰り返される変化の積み重なりから、変わらないリズムが作られる。安心感を覚えるいつもと変わらない風景とは、何も変化しない風景ではなく、いつもと同じリズムをもった風景なのだ。


北尾 琴(きたおこと)
1975年神戸市生まれ 武庫川女子大学 生活環境学部 生活環境学科 建築都市設計学研究室助手