パイプあま 第2回 未来へと続くパイプ

うねうねと進化する

コンピュータや携帯電話にTV、あらゆる家電は技術の進歩と共に小さくなっている。本やビデオテープなど情報の記録媒体も小さくなり、それを保管する場所も小さくてよくなっている。すると建築はどうなるか。昔図書館、今メディアテークと呼ばれる建物を例に取る。閲覧室は「資料保管庫」に付属する「かびた」暗いイメージから、明るく、本の少ない、そして本がPCの中で読めるようになればいずれは何もない空間へと変化していくだろう。これは「新しい」建築のもつ「何も部屋に置かない」、俗な言い方をすれば「MUJI」なるデザインとも符合する。

で、ここからが本題。家電やPCなどはどんどん小さくなって実体を消し、部屋の中はガランドウと化していくのだが、それを支える物流や、インフラにあたる部分は決して実体を失わないのである。インターネットを介して本は便利に注文できるが、本を届けてもらうには運送業者が車を走らせなければならない。上水は水源から地下を通り、建物の壁の中を通って水道の蛇口に来ないといけないし、下水は逆に建物から順に外へ出ていく。電気やガスも同じである。ここまで書けば、おわかりでしょうか。そういうインフラとなる管=「パイプ」を製造する工場が尼崎には多いのである。建材用鋼管に機械構造用鋼管、水道・下水用ダクタイル管、組立マンホールに光ファイバー対応型マンホール、装飾・構造用ステンレス鋼管、電路資材(電気配線用の管)、変わったところでは、管の製造技術を活かしたトンネルや農業用池など、管と名付けられる物のあらゆる進化形がここ尼崎の工場で製造されているのである。

建築の主空間はガランドウとなるのと対照的に、主空間の裏となる壁の中で、パイプは建築の「内臓」としてうねうねと這いまわり、機能上の進化を続けている。未来にわたって都市や建築を支えるパイプをつくり続ける工場がそばにあること、は、誇ってもいいんではないだろうか?


tts
建築を学問する34歳。
産業遺産、とくに生産設備系の施設の造形的な面白さに惹かれて今日に至る。