日常まち歩きの心得 歩いている時には何を見ていますか?

「まち歩き」の目的はまちを知ることにあります。

風景は近くから遠くに見えるものの重なりでできています。風景に仕切りはなくても、状況によっては見ているのに見えていないものがあることには気付いていますか。電車の窓からは、遠くの山や雲ははっきり見えるのに、通過する駅名の様に近くのものには目がついていかない、つまり移動手段が早くなるほど近くのものも同じスピードで目の前から過ぎ去ってしまい、見えなくなります。逆に、歩くなら多くのものを見る事ができるのです。

遠くに見える目印は多少の移動では動かないので、方向確認に役立ちます。例えば距離のある道を訪ねられた時には「二つ目の信号を右で100メートルぐらいしたら左で…」などと言っているとかえって混乱するので、この見え方を利用して「向こうに見える茶色のビルの並びです」と言った方が分かりやすいですね。

日本庭園では、遠くに望む山まで景色の一部に考えて楽しむことがあります。銭湯の多いまち尼崎。遠くの銭湯の煙突を犬小屋や郵便ポストに重ねて、お風呂屋さんに変身!なんて事が出来る、自分だけが知っているポイントを発見するのも楽しいですね。「あの煙突がそこの赤い屋根から生えている様に見えた時に右に曲がって…」なんていう道案内も楽しくないですか?


北尾 琴(きたおこと)
1975年神戸市生まれ 武庫川女子大学 生活環境学部 生活環境学科 建築都市設計学研究室助手