写真とかたる 【2】 こだわりは今も走り続ける。

尼崎で撮った昔の写真を見て、当時の思い出を語ってもらいます。ご本人が写っている懐かしのスナップをお寄せください。

1983 城内公園

「おやじが好きでねえ。こだわり始めたらきりがない」。大隅秀彦さんに亡き父、清さんの思い出を語ってもらった。「このSL、ライブスチームっていうんですよ。写真はNHKの取材で近松公園を走らせた時ですわ。1/7スケールのアメリカ大陸横断鉄道で当時250万円くらいしたんとちがうかな。クラウン1台買えますよ」とあきれる息子秀彦さん。当時は珍しかったため、各地のイベントから声がかかり、自慢のSLを父と一緒に走らせた。

若い時に鉄道模型にはまり、いつのまにかミニSLを走らせるまでのめりこんだ清さん。「父も薬剤師やったんですけど、調剤室が鉄工所みたいになってましたわ」というほど趣味は深まっていた。

こだわりは尼崎の薬局から海をも渡り、アメリカの大会に出場するほどに。「死んだら棺桶をこれで運んでくれ」というのが口癖だった清さんの葬儀では、本当にSLに載せられた棺が霊柩車までの線路を駆け抜けた。おやじもすごいが家族もすごい。彼の遺したSLは息子に引き継がれ、今も各地のイベントで子どもたちを乗せて走り続けている。

今回のご提供は…大隅秀彦さん

昭和20年尼崎市下坂部生まれ。三栄薬局代表取締役。潮江、下坂部で3店の薬局を営む


聞き手・文 若狭健作