サイハッケン 尼崎がドラマの舞台になりまくっていた。

明日誰かに話したくなる尼崎南部の知られざる話題。「あれちょっと調べてきて」という情報も募集中です。

『エルピス-希望、あるいは災い-』(関西テレビ)では、空き店舗が並ぶ三和市場や、杭瀬の純喫茶「珈論琲亜」がたびたび登場。長澤まさみがお店を出て角を曲がるとそこは三和市場、というような時空を超えるケースは「あなブツ」でもみられる。杭瀬と三和はドラマでよくつながる。

2021年秋頃からドラマの舞台として尼崎がにわかに注目を集めている。しかもどれも名作ばかりときている。

皮切りとなった『ムショぼけ』は、原作者の沖田臥竜氏が尼崎出身ということもあり、新三和サンロード商店街や中央公園などが実際の尼崎として登場する。公式サイトでは「私の地元・尼崎は特段、変わった街ではなく、ごく平凡な場所です。その平凡な街並みにフューチャーし、そこで起きる人間模様を通して、尼崎という地域を伝えることができたと思っています」とコメントを寄せている。

22年に放送された『拾われた男』も原作者が尼崎出身という縁がある。俳優の松尾諭氏の自伝的エッセイがドラマ化され、幼少時代の家族との思い出の場面として繰り返し、武庫川河川敷が登場する。珍しい橋上駅でもある武庫川駅の美しさを再発見するような最終話は必見だ。

『あなたのブツが、ここに』は、尼崎に暮らす元キャバ嬢の宅配ドライバーが、三和市場、杭瀬中市場、五色横丁、第一敷島湯、ゑびす神社、小田南公園…と挙げればきりがないほど市内を走り回る。「この撮影場所は一体どこかと気になりすぎてストーリーが入ってこない」というファンもいるほど。もちろん内容も抜群だ。コロナ禍の焦燥感や鬱屈した雰囲気の中での人々の気取らないつながりを描き、22年度ギャラクシー賞に輝いている。

なぜこんなに続くのか。あまがさき観光局では撮影場所探しや公園の使用許可、スタッフのお弁当の相談などに応えてきた。「積極的な誘致は特にしていません。文字通り舞い込んできたという感じです」と事業課の奥村遥さんもその反響に驚いている。聞けば、前任者がとにかく熱心な職員で、撮影のために奔走してきた評判が業界で少しずつ広まっているとかいないとか…。観光局のサイトでは市内のロケ地も紹介するなど「撮影をサポートすることで、放送後に尼崎に遊びにきてもらえる波及効果に期待しています」と今後も支援を続けるという。

24年春にはついに尼崎を舞台にした映画が公開予定だ。尼崎出身の映画監督・中村和宏氏が描くその名も『あまろっく』に期待が高まる。

写真提供:あまがさき観光局


取材・文/若狭健作
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