押忍!館長 スポ根ってなんスか

スポーツ漫画や映画の一大ジャンルとして知られる「スポ根」。かつてK-1のリングに立ち現在は愛のあるフルコンタクト空手を伝える道場「真正会尼崎」を主宰する松井厚館長におすすめの映画とあわせて「スポ根」について教えていただきます。

つよく、やさしく、かっこよくがテーマ

松井厚さん
全日本真正空手道連盟真正会尼崎支部・尼崎東支部師範。一般、子ども向けの空手指導に加えて、ウエーブストレッチ教室、カンフーとカレーを楽しむといった謎のイベント「武活Bu-Katsu」を主催。1973年生まれ。

松井少年が格闘技に関心を持ったのは小学生時代。香港映画スターのジャッキーチェンに憧れたもののカンフー道場なんて、当時身近になく、格闘技として空手を選択した。

神戸の高校を卒業した後、郵便局に就職。郵便局員として働きながら空手道場に通ううちにK-1(キックボクシング)が始まり、公務員の職を投げ打って、プロ格闘家の世界に飛び込んだ。尼崎次屋のちゃんこ屋でホール係をしながら大阪の道場に通っていたのもこの頃だ。

「レベルの高い人たちと有名選手のテクニックを学んで練習するのが、しんどくてもとにかく楽しかった」。ヘビー級の選手たちとの練習をこなし、アマチュア部門で優勝。タイでプロデビューした時のファイトマネーは6000円だった。その後K-1でデビューを果たすも通算成績は6戦2勝3敗1分(2KO)。目のケガのためチャンピオンにはなれなかった。

「人前に出るなんてできない控え目な小学生。空手に救われた」という松井館長。自身が経験したように、自信のない子に自信をつけてあげたいと尼崎の道場を譲り受けた。チャンピオンを目指す人には「よそでどうぞ」と説明しているらしい。

フルコンタクト空手は素手で他人の身体を殴る格闘技だ。叩かれることで自分が叩いた時の相手の痛みがわかる。言葉のコミュニケーションが無くても成り立つ時代に「拳で語りあう」ことができるという。

そんな道場のテーマは「強く、優しく、かっこよく」。この「かっこよく」がミソで、自分より弱い相手を全力で殴るのがかっこいいか? 見えないところで手を抜くのはかっこいいか? と生徒たちに問いかける。真の強さ、優しさとは何かわかってほしいと願っているからだ。

スポ根はありだ、という松井館長。

スポ根もののいいところは、初めは弱い主人公が「自分を変えたい、強くなりたい」と努力し、成長していく姿だという。これは松井館長の歩んできた人生そのもの。

取材の最後、「とにかく『スパルタンX』を見てください。ユンピョウの方がジャッキーよりコンマ数秒回転が速いんです」とカンフー映画を熱く語りはじめた松井館長。少年時代からブレない姿がそこにあった。

館長、押忍(おす)!すめスポ根映画
『チャンピオン鷹』

トラブルで田舎を追われた青年が都会でプロサッカー選手と知り合い、特訓を経てプロサッカー選手になるも、八百長絡みでトラブルに巻き込まれて退団。新チームで自身を追い出したチームと戦うというストーリー。松井館長オススメだけありアクロバット満載。主演・ユンピョウ


取材と文 立石孝裕