THE 技 さすらいの被災地ボランティア

最先端技術、職人技、妙技、必殺技…アマで繰り出すプロのワザに迫る

果報なりんご
「市場に出せないリンゴの販路を」と長野産リンゴのインターネット販売も始めた。 ホームページ

今回紹介するのは、全国の被災地に駆けつけている防災コーディネーターの高砂春美さん(74)。阪神淡路大震災では神戸市東灘区で被災した高砂さん。当時子ども会の会長だったことから、避難所での混乱を整理しながら、その運営を通じてコミュニティづくりを行った経験の持ち主だ。

現地では携帯電話片手にボランティア仲間と連絡を取り合う高砂さん。

避難所で人々はなんの前触れもなく、共同生活が強いられる。衛生状態を保ち、健康をいかに守るか。救援物資の置き場所と配布方法、ペットの居場所やルールを決めたり、災害ボランティアの受入れや医療体制づくりなど仕事は多岐にわたる。しかし行政もすぐには機能しない。行政からの支援をただ待つだけの顔ぶれに、高砂さんはメンバーを集めて「自分たちのできることは自分たちでやろう」と呼びかけた。被災者も運営を分担しなければ、避難所は機能しない。以来25年にわたり、この被災体験を伝えようと、全国での講演や避難所コミュニティづくりを手伝ってきた。

昨年、長野県を襲った大型台風。川が決壊し、大規模な浸水被害が起こった。「行ってみないとわからない。まずは行ってみよう」と数日後に現地へ向かうことになった高砂さん。先行する支援者から「現地で軽トラックが足りない」という情報を入手し、尼崎で軽トラックを手配し、長野へと向かう救援活動に筆者も同行した。

被災地に着くなり、役場の防災担当や災害ボランティアセンターで被災状況を聞いて回り、被害がもっとも大きな場所へと向かう。そこは千曲川の堤防が決壊した場所。道路には泥が積もって動かない車、山積みの瓦礫が散乱する。「何か必要なものはありませんか、どうですか」と気さくに声をかけていく。片付けをしているご夫婦は「1階は全て水に浸かって、2階で過ごし、ヘリコプターで救助された」と話す。

「災害復興は初動対応が大切。今回は現地入りが遅かった」と言いながらも、高砂さんは今できることを必死で探す。

翌日、災害ボランティアセンターで知人に遭遇し、軽トラックで土砂搬出の作業を始める。昼食は炊き出しの焼きそば。この現場でも高砂さんの知人と出会う。災害ボランティア拠点の担当者を紹介され、尼崎から乗ってきた軽トラックを預けて帰路についたのだった。


取材と文/岡崎勝宏(おかざきかつひろ)
図面が描けるアマプロレスラー、趣味は井戸掘り。