タダで仕入れた服を売る店

チャリティショップふくる 上坂部3-11-1コープ尼崎近松店内 10時30分~15時 火日休

タダでもらった服を売る店。2019年4月にオープンした「チャリティショップふくる」はまさに本特集にふさわしい、わけがわからん店だ。コープ尼崎近松店の一角、ハンガーラックに囲まれて500点ほどの古着が並ぶ。価格は500円からと買いやすく商品も定期的に入れ替わるため、この日もオープン前から近所のおばちゃんたちが新商品のチェックに集まっていた。

ところで、仕入れがタダなら丸儲けやないですか。運営するNPO法人「月と風と」代表の清田仁之さんに聞いてみた。「寄付してもらった商品をボランティアの協力で販売して、その収益を社会に還元するんです」。こうしたチャリティショップの仕組みは欧米ではさかんで、イギリスにはなんと1万6千軒ものお店があるという。神戸ですでに運営していたNPO法人フリーヘルプのチャリティショップがお手本になった。ファストファッション化がすすみ、毎日大量に焼却処分される古着問題に加えて、「服」を通じて地域の人がつながる仕組みに魅力を感じたという。

尼崎での開業を後押ししたのは、清田さんの法人で障害者の生活支援をする中、車いすの20代の男性から「僕の時給を計算してみたら20円でしたよ」と言われたことがきっかけだという。「障害のある人の中には軽作業や単純作業ではなく、接客が向いている人もいる。お店を通じて社会とかかわるきっかけになれば」という思いと、服と福祉がつながるようお店を「ふくる」と名付けた。

オープンから1年。「とにかくみなさんとよくおしゃべりしています。お買い物はそのついでに、って感じかな」というのは接客を担当する清田真希さん。自分が寄付した服が売れているかチェックに来たり、買った服を着た姿をお店に見せに来るなど、お店とお客の新しい関係が生まれている。

尼崎の店って減ってるんですか?

飲食店や物販店、サービス業など尼崎のお店事情に詳しい尼崎商工会議所事務局長の小林史人さんに聞いてみた。

尼崎市内の事業所をサポートする尼崎商工会議所。開業支援から補助金活用、事業承継などお店を取り巻くさまざまなサポートをしてくれる心強い味方だ。まずは小林さんが入所した平成5年当時を振り返ってもらった。
「あの頃は商売人の意気や活気を感じながら仕事をしていました。それぞれの商店街に名物商店主がいて、大型店の出店を食い止める動きも活発でした」。

流れが変わったのは平成12年の大型小売店舗立地法(大店立地法)の施行。出店にあたって届け出が必要な要件が「500m2」から「1000m2以下」に緩和され、事実上大型店の出店が加速してしまったという。街の小さなお店にとってはなかなか厳しい。

売り上げが立たなかったり、後継者がいないなどの理由から廃業する店があるのは仕方ないが、新陳代謝も起こりづらくなっている。通行量の多い駅前や商店街は、賃料が高止まりし新たな出店を呼び込むにも、資本力のある人しかチャレンジできないのが現状だ。

「この調子でお店が減っていくのはまちや住民にとっては大きな損失」という小林さん。後継者がいなくてやめたいお店と、新たに事業をはじめたい起業家がマッチングするような、運命的な出会いの演出に期待したい。