THE専門店

パチスロ、プロカバン、絵葉書…しか置いてない店。ネットでも買えるけど、やっぱり手に取って見てみたいと全国からマニアは尼崎を目指す。

西長洲にそびえるパチスロ塔

BIG SLOT(ビッグスロット)西長洲町2-14-14 10時~18時 日休

「南部再生」創刊当時から気になっていた西長洲町のお店。というかそこは倉庫のようで、中をのぞくと天井までぎっしりとパチスロ機が積まれている。その台数、なんと1000台。「パチスロ販売」と書かれた看板に、一体誰が買いにくるのか気になって店内をのぞいた。「基本はネット販売ですが、実際に現物を見たいという方が訪ねてこられます。ほとんどが個人のお客さんですよ」と責任者の水口尚明さんが教えてくれた。まるで森のようにそびえるパチスロタワーにスロットファンは驚きの声を漏らすのだという。村上春樹の小説『1973年のピンボール』で、主人公が思い出のピンボール台「スペースシップ」と対面を果たすそんな場面があったのを突然思い出した。

毎月新台が発表され、入れ替えの激しい業界。使われなくなった台をホールから買い取り、家庭で遊べるように改造して、20年ほど前からここで販売している。「練習用に買っていかれたり、思い出の台を探しに来たりお客さんはさまざまです」と水口さん。6段階ある当たり確率の設定も自由に変えられるので、「一番よく出る6で打ってみたかった」という夢が自宅で叶うのだという。気になる価格は一台8800円から。安い!

父の遺した絵葉書コレクション

図研 開明町1-17 10時~17時 日休

阪神尼崎駅南すぐのタワーマンションの隣、再開発から免れた長屋の一角に、ひっそり存在する古い紙モノに溢れた小さなお店がある。2年前の台風で看板すらない状態が続いているが、勇気を持って扉を引くと、店主の中西隆次さん(56)が明るい笑顔で迎えてくれる。

お店に並ぶのは、雑誌やマンガの古本やポスター、切手、古銭と幅広いが、中でも絵葉書のコレクションが群を抜く多さだ。発行されたのは明治後期から昭和初期のものが中心で、観光名所や美人画など。絵葉書は棚にジャンル分けされて、値札も付いて分かりやすく並べられている―が、「ウチの店は、来店客は月に2~3人」という少なさに驚く。数年に一度は海外の研究者が訪ねてくることもあるそうだが、「ネット通販やオークション、即売会での購入がほとんどやね」と教えてくれた。

元々は中西さんの父・洋さんが製図屋として事務所にしていた場所。趣味で集めていたが、かなりの仕入れ量となった紙モノたちを売るために始めたのが「図研」だ。昭和50年頃からというから、かれこれ40年以上経つ。7坪のお店に収まった商品点数は10万点を下らないそうだが、いまだ隣の2階建て倉庫にも商品がぎっしり。「まだまだ終わりのない作業なんやけど、オヤジが大事に集めたものやから」と、毎日コツコツと母、姉とともに亡き父が遺したコレクションを丁寧に荷解き、商品化する作業が続いている。

あのカバンにもう一度会いたくて

菅原屋 神田南通2-44 三和本通商店街内 10時~18時 木休

天井から壁までカバンや財布で一面に埋めつくされた小さなお店に行くと、店主の菅原優さん(61)が「今度はこんなん作ったんです」と奥から新作を次々と見せてくれる。現在お店で扱う商品は1万点以上。父が昭和30年代に三和本通商店街に開店した当初は、ボタンや靴下を扱うお店だったが「いつのまにかカバン屋になっていた」という。

阪神大震災でお店が倒壊したが、リュックを求める客が遠方からも殺到した。翌年には父が亡くなり、お店を継ぐことになった菅原さん。世の中に流行をとらえた新しいカバンが次々と生み出される一方で、古い客からは「あのカバンないか」というリクエストが寄せられる。新聞屋さんの集金カバンやお医者さんのドクターバッグなど、映画や漫画に出てくるようなプロが使う「あのカバン」が欲しい、という声に独自の復刻商品を開発してきた。

代表作は「車掌カバン」。電車やバスの車掌さんが首から下げているアレだ。叡山電鉄、水間鉄道、土佐電鉄など全国のローカル路線から注文が寄せられるヒット商品となった。これに手提げをつけた「2way」、ベルトループをつけた「3way」など菅原さんによる独自の進化が止まらない。