地元の子どもたちに 市場で食べる楽しさを

少し甘めのカレーライスが大人にも人気。補助金はもらわず街の人のカンパや差し入れで運営する。

焼きそば丼を覚えているだろうか。杭瀬中市場のお好み焼き店「カキウチ」の一皿で、ごはんの上に焼きそばと目玉焼きを乗せたパワーフードだ。お店は買い物客や市場で働く人の食堂のようににぎわっていたが、惜しまれながら閉店。そこで立ち上がったのが、お隣の総菜店「もっこす亭」の石原和明さん(写真上・前頁にも登場)だ。

空いた店舗を借りて、その名も「市場食堂」というお店を2014年にオープン。刺身定食を頼むと向かいの平野鮮魚店から新鮮なお造りが運ばれてくるし、小鉢の豆腐は宮島庵、お米は池永米穀店、麺は三和製麺所といった具合で、地元の味にこだわった。

市場のお食事処の復活から3年、次は「杭瀬の子どものために何かできないか」と、もう一肌脱ぐことに。「みんなの杭瀬食堂」と銘打ち、4~9月の第2、第4水曜日にいわゆる「子ども食堂」を開く。子どもは無料、大人は300円でカレーや焼きそば、スパゲッティを提供する。「子ども食堂といえば『貧困家庭が行くもの』というイメージがありますが、誰でも来れる場所を作りたかったんです」と話す地域学校協働活動推進員の大槻真佐子さん。杭瀬小学校では泣く子も笑う「恐怖のオオツキさん(本人談)」から「宿題してから食べや」などと声をかけられながらも、子どもたちは大人とのかかわりを楽しんでいる。

地元の酒屋や不動産屋が受付をし、整体師や喫茶店のマスターが焼きそばを焼く。杭瀬の店主たちで切り盛りするちょっと不思議な食堂に、多い時は120人以上が集まる。閉店直前、「これ食べや」と向かいの平野さんが差し入れてくれたかつおのたたきの味に子どもたちの顔が輝いた。


食堂支える頼もしいスタッフ

大槻さん(左)のサポートを、と小田地域課の中川さんも食堂を手伝う。