行くぜ杭瀬

15年ぶり2度目の特集

2004年8月に発行した第15号では初のエリア特集として杭瀬をピックアップ。

15年前の「南部再生」をパラパラとめくる。そろばん特区のモデル校になった杭瀬小学校の授業風景が巻頭を飾り、「杭瀬再生」と銘打ち36歳の最年少理事長が誕生した商店街の取り組みや「10年先の商店街のイメージを発信していかないと」という礒田雅司さんのコメントを紹介している。すでに15年が経過してしまったが、果たして杭瀬は再生したのだろうか。

尼崎公害運動のルーツでもある杭瀬団地。15年前は「600万円台、魅惑の物件」と紹介したが、今や間取り違いや上階で探せば300万円台の物件もあるという。自分たちでリノベーションして住む若者に人気なのだとか。

本町、栄町、本市場、昭和ショッピングロードなど商店街や市場を紹介したが、ここ数年は組織の枠をこえた「杭瀬アクションクラブ」なるグループが毎月集まり、まちの再生プロジェクトを企んでいる。先の礒田さんはそのリーダー役だ。

今、杭瀬にユニークなお店や施設のオープンが続いている。何か新しいことが起こりそうな予感にあふれた尼崎のディープサウスの最新事情に迫ってみた。

杭瀬で何かが起こる予感がするので…。

9月1日のプレオープンイベントには、これまで市場で見かけない若者と、地元の町衆が集まった。[写真:諸富 稜]

「にいちゃんら、ここで何屋すんの?カラオケか」と向かいの田渕商店の奥さんから冷やかされながら、杭瀬中市場にある元漬物店を自分たちでおよそ2カ月間の工事を経て2019年10月にオープンした。

「amare(あまり)」というその場所は、「尼崎ENGAWA化計画」を名乗る3人がかつて塚口さんさんタウンで運営していた施設の名前を受け継いだ。代表の藤本遼さん(29)は「場を編む人」として、多くの若者とともに、人々が主体的に関わることができる「場」づくりに取り組んでいる。「塚口は2年前にビルの建て替えで一旦閉鎖していたけれど、今度は杭瀬でamare第2章を僕よりさらに若い二人とはじめます」という藤本さんが運営メンバーに選んだのはなんとユーチューバー。

廣瀬有哉さん(22)と今西奈緒幸さん(23)の二人は「若者の挑戦を応援したい」と自らも若者ながら思いを語る。とはいえ、土地勘も経験もないゼロからの出発。これを杭瀬の町衆たちがとびきりのおせっかいでサポートする。住まいの世話や食事をおごられたり、工具の提供から現場での指導、差し入れまで。「君らがどうやったら、杭瀬で食っていけるのか考えるのが俺らの仕事」というのは町衆の一人で彼らが「杭瀬の父」と慕う総菜店と食堂を営む石原和明さん(54)だ。

「で、ここって結局何屋さん?」 と廣瀬さんに聞いてみた。「杭瀬のまちの人がふらっと立ち寄れて知り合いになれる集会所のような場所にしたいです」と、ぼんやりした答えだけど、何かが確実に始まりそうな予感がする。杭瀬の息子たちのこれからの挑戦に注目したい。


HUNGRYS ハングリーズ

廣瀬さん(左)と今西さんによるyoutubeユニット。杭瀬のプロモーション映像を配信しているのでぜひチャンネル登録を。