神主のぶらり街歩き

連載第26回 貴布禰神社 境内をぶらり

最近、神社を訪れられる参拝者からお褒めの言葉をいただく。「神社北側の参道がきれいになりましたね」と。そう、平成27年に迎える遷座300年の節目へ向け、昨秋から記念事業として北参道整備事業を 行ったからだ。約200本の玉垣を奉納していただき、参道も舗装させていただいた。玉垣とは奉納者の名前を刻んだ石の柱のこと。当社での玉垣新設は約50年ぶりのことで、多くのご協力をいただくことができた。

そして、もう一つ記念事業として、当社境内に鎮座する白波稲荷神社の修復工事に取り組んできたが、この春に無事竣工の時を迎えた。このお社は元々、尼崎城本丸にあり、城主が城下の安泰を祈願されていた神社だ。明治2年、ご維新廃城の際、ご城主・松平忠興公が費用一切を負担され貴布禰神社に遷座。その後、昭和12年に現在の規模の神社に改築された。

今回、工事を担当された職人さんによると、物がなくなりつつあった当時にも関わらず、屋根に銅板を使用していること、また、お社も規模の割に造りが男性的であることなどから、著名な設計者が工事にかかわったのではないか、とのこと。工事費に糸目をつけない、とても価値のある建物であることがわかった。

4月11日にはご神体に新しくなったお社に戻っていただく本殿遷座祭を斎行した。暗闇の中、ご神体を白い布(絹垣)で隠し厳かにお引越しいただいたが、見学された皆さんから「去年の伊勢神宮の遷宮と同じでしょ。お伊勢さんに行かなくてもええもん見れたわ」と言っていただけた。規模はかなり違ったが、荘厳さをお感じいただけたようだ。

これで大きな記念事業は終わりいよいよ来年節目の時を迎えることとなった。神社を取り巻く環境は激変しており、私が父の跡を継いで20年が経過したが、人で賑わうべきはずの境内がさみしく感じる日が増えている。そこで、来年は1年を通して神社を身近に感じていただけるような行事を展開すべく思案中だ。遷座の経緯や記念行事については、遷座300年を記念しようやく立ち上げたホームページまで。そう「詳しくはWEBで!」。
http://kifunesan.jp


江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンなお社きふねさんの第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。ラジオ番組「8時だヨ!神さま仏さま」(FMあまがさき毎週水曜日夜8時~)も好評放送中。podcastも。