尼崎コレクションvol.20《MADE IN OCCUPIED JAPAN(メイドインオキュパイドジャパン)のミニカー》

尼崎市内に現存している逸品を専門家が徹底解説。あまりお目にかかれない貴重なお宝が歴史を物語る。

コレクター垂涎のミニカー

太平洋戦争に敗戦した日本は、1945(昭和20)年9月2日、アメリカ海軍戦艦ミズーリの船上で連合国との間で降伏文書に正式に調印しました。これ以降、1951(昭和26)年9月8日に調印したサンフランシスコ講和条約が発効する1952(昭和27年)年4月28日までの約7年間、日本は連合国の占領下にありました。この占領時代に日本国内で製造され海外に輸出された製品には全て「MADE IN OCUPPIED JAPAN(メイドインオキュパイドジャパン、『占領下の日本製』)」の表示が義務付けられていました。特に、GHQはアメリカ本土での玩具不足を解消するとともに、アメリカからの小麦・とうもろこし等の食糧品輸入のための外貨獲得手段として、玩具の生産・輸出を奨励しましたので、日本の玩具産業は終戦後いち早く復興し、セルロイドやブリキ、陶器製の小型玩具がアメリカにたくさん輸出されていきました。写真のゼンマイ仕掛けのミニカーも外箱に「LUCKY-CAR MADE IN OCUPPIED JAPAN」と表示されています。まだ国内に食糧品も生活必需品も不足していた占領下の苦しい時代に、原料も設備も不十分ながらも創意と工夫によって玩具を製造し、必死になって外貨獲得に貢献してきた日本のものづくりの姿が、この小さな玩具ひとつからも見て取ることができますね。なお、「MADE IN OCUPPIED JAPAN」の玩具は、玩具コレクターの間では「OCUPPIED JAPANもの」、「MIOJもの」などと呼ばれ、とても人気が高い玩具だそうです。

企画展で会いましょう 文化財収蔵庫

7月19日(土)から8月31日(日)まで文化財収蔵庫で開催する企画展「夏季学習展こどもたちの戦中戦後」に出品しますので、ぜひ、ご観覧ください。9:00~17:30 4月からは土日祝も開館(月曜が休館に)入館無料●南城内10-2 TEL:06-6489-9801


桃谷和則
尼崎市教育委員会学芸員 5、6月は「尼いも先生」となって、市内の小学校・幼稚園を自転車で駆け巡りました。