フード風土 41軒目 チャミのカレー

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。
取材・文=松本創(本誌)

家族と街の記憶宿す「七変化カレー」

カレーには七変化の楽しみがある。うどんによし、鍋によし、コロッケやパンにもよし。どうアレンジしても旨い。で、どんな姿に変わっても、もとの味わいが物を言う。まるで、多彩な役柄をカレーに演じ分ける個性派俳優のような…。

そんな七変化の楽しみが[チャミのカレー]にはある。商店街の赤のれんを潜って細い通路を進めば食券販売機。カレーうどん、オムカレー、焼きカレー、カレー雑炊…壁に並ぶ写真に、ボタンを押す指が迷う。ベースとなるのは、店主のチャミさんこと高瀬久美さん(56)が、今は亡き義母から受け継いだ定番のカレーライスだ。

「主人の母は神戸でお食事処をやってて、時々出すカレーは、わざわざ食べに来る人もいるぐらい人気やったらしいの。母が店をやめた後、私は家で手伝いながら教わったんやけど、母も50年ぐらい前、外国航路のコックさんに習ったんやって」

定番カレーライス730円。焼きカレーはドリア風もあり。カレーうどんは、そばや中華麺も可。予約すればカレー鍋も。

昭和のハイカラ神戸発・高瀬家経由のカレーを、さらにアレンジして尼崎に持ち込んだ傑作が、石焼きカレー880円とカレー雑炊730円。「寒い日はこれ」と勧められ、飛びついた。

石焼鍋の中、卵とふんだんなチーズを載せた石焼きカレーは、ビビンバ同様よくかき混ぜて食べる。ひと混ぜごとに鍋肌がジュージュー鳴り、スパイスが香り立ち、チーズは溶け広がる。「混ざり具合で味がちょっとずつ変わっていくの。おこげも美味しいよ」とチャミさん。

うどんだしでカレーを溶き、コトコト煮込んだカレー雑炊は、滋味と包容力あふれる「和」の一品。昨今の火を噴く激辛カレーとは対極の深い味わい。

「カレーって、いろんなスパイスを混ぜた薬膳料理みたいなもの。気がついたら額や背中にじんわり汗をかいてた…ぐらいの方が、芯から温まって、身体に効いてる感じがするでしょ」

と、そんな話をしている間に、小中学生が「こんにちは」と次々店に入ってくる。ここはもともとチャミさんの実家が営むサンリオショップだった名残で、今も駄菓子を売っている。鎮座する看板娘はキティちゃん。2階には寺子屋のような塾があって、チャミさんのご主人が教えている。昔から子供が集まり、育つ場所だったわけだ。

カレーも店も、姿は変わっても、原点の味わいはしっかり残っているのである。


41軒目 チャミのカレー

神田中通5-182-3
中央五番街内
正午ごろ~19:30 水曜休
06-6411-3059