サイハッケン コントラバスの森があった。

長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!
ディープサウスの魅力をご堪能ください。

店に入ると、そこはコントラバスの森が広がっていた。常時60本が並ぶコントラバスの工房「ゼーレ」。「これだけの本数から選んでもらえるのは西日本ではうちくらいでしょうね」という太田精一さん、6年前に金楽寺町にお店をオープンした。生粋の尼っ子で、杭瀬小学校では器楽部に入りコントラバスと出会った。父が楽器店を営んでいたことから、お店に通うプロに指導を受けながらその腕をみがいた。中学2年でロックに出会いエレキベースにはまったものの、常にコントラバスは身近な存在だった。

社会人になると今度は演奏よりも製作に熱中するようになった。自分の楽器を直したり、材料を買ってきてバイオリンを組みたてたりと独学で楽器作りを勉強した。そしてついに大阪の弦楽器工房の門を叩く。長年の修行を経て、故郷の尼崎にコントラバス修理・販売専門店を開店したというわけだ。

ゼーレ弦楽器工房
金楽寺町2-11-31
TEL:06-7494-9290 火休

お客さんは初心者からプロまで幅広い。大学の軽音学部でジャズを弾き、エレキベースから乗り換えたいというお客さんだったり、趣味の楽器にお金をかけてみたい世代だったり。まずは「どういう弾き方をしたいんですか」という質問から楽器選びを始めるという太田さん。やはり演奏者としての経験が物を言う。ジャンル、音楽スタイル、技量に応じて、楽器の調整方法が違うという奥深さも職人の腕の見せ所だ。

気になる値段は20万から600万円までとこれまた幅広い。「予算や演奏スタイルに合った最良の1本を妥協なく選んで欲しい」のだという。「一生モノ」のコントラバス選びの購入から修理まで頼れる専門店。毎年、5月から7月くらいまでは、中学・高校からの修理依頼が殺到する。ゆっくり選ぶなら試奏予約がおすすめ。コントラバスの森で、じっくり太田さんに相談に乗ってもらいたい。


取材と文/香山明子
コントラバスに刺激を受け、長らく我が家でお蔵入りしていたウクレレを取り出した(まだ弾けない)