「尼崎21世紀の森」を読み解く木word [キーワード]

壮大すぎてちょっと分かりにくいプロジェクトを、4つの数字を使ってご紹介。5分で分かる「尼崎21世紀の森」の世界へ。

植樹全部で20万本

中央緑地にある苗木の圃場には139種類4万ポットが並び、植樹される日を待っている。

森づくりのリーディングプロジェクトとなる「森びらき」が平成18年5月に開催され、「尼崎の森中央緑地」の一部が開園した(=はじまりの森)。オープンから8年、その間に約5万本の苗木が植えられてきた。中央緑地における植生配置は、「落葉広葉樹林ゾーン・草原ゾーン」「照葉樹林ゾーン」「海浜ゾーン」の大きく3つに分けられ、低木や草木などを含む94種類の苗木が植えられている。これから10年をかけてさらに約15万本の苗木を植え、六甲山のような森に育てる計画だ。

苗木の里親4千人

年に数回開かれる植樹祭では自宅で育成した苗木を持ち寄り、一斉に植樹する。1年近く一緒にすごした苗木との別れはさみしいが、次に訪れた時にどのくらい大きくなっているのか、里親としては再会が楽しみだ。

この森づくりでは「苗木の里親制度」を導入している。この取り組みは、尼崎に住んでいる人が自宅などで15cm程の苗木から30cm程の若木になるまで育て、1年後に中央緑地に植樹するというものだ。里親期間は原則1年間、一人2本までと決められており、里親は責任をもってそれを育てる。里親に預けられる苗木にもこだわりがあり、一般に出回っている苗木は一切使用しない。武庫川、猪名川上流の森から種子(タネ)を採取し、苗木に育てるという独特なスタイルを採用している。里親制度は平成21年、苗木の植樹は平成24年からスタートし、これまでに苗木を自宅で育て、苗木を森に返した人数は既に4000人を超えている(平成25年現在)。

構想エリアはこんなに広いんです。1,000ha

臨海部の将来像をまるごと描いた「21世紀の森構想」は兵庫県ホームページからもその内容を確認できる。膨大な資料を読むのがつらければ、概要版PDFがおすすめ。といっても38ページもあるが…

このプロジェクトの全体の敷地面積は約1000ヘクタール。尼崎市域の約20%も占めている。これは万博公園の約4個分、甲子園球場だとなんと250個分だ。具体的な活動拠点となる尼崎スポーツの森や「はじまりの森」がある尼崎の森中央緑地は29ヘクタール。全体と比べると小さく感じるが、スポーツの森にある50mプールの232個分と考えると、その大きさを実感出来るだろう。(できるか~い!)しかし、1000ヘクタール全てを森にする訳ではなく、現在4%しかない臨海地域の樹木緑被率(敷地面積において樹木が占める割合)を、22世紀初頭までに30%以上にするという、ビックプロジェクトに相応しい壮大な目標があるそうだ。

2025年頃には森が出現?

中央緑地内にある「はじまりの森」。2006年に植樹をはじめた場所は8年が経ち、ちょっとした林になっている。木の間を歩けば、ちょっとした森林浴気分も味わえる。訪れるたびにこのゾーンに注目すると、その成長のスピードが定点観測的にわかる。

臨海地域に森が出現するのは、だいたい2025年頃だそう。「100年後なんて生きているうちに見られへんやん」…とあきらめていたが、案外、先の話でもなさそうだ。実際に、「はじまりの森」では子供たちが植えた苗木がスクスクと育ち、森らしくなってきた。プロジェクト立ち上げから今年で10年。森づくりは一つの節目を迎え、次の10年へ向けて再スタートをきろうとしている。その森づくりは、10年~20年の短期的なものと、50年~100年の長期的なものに役割が分けられているそうだ。この森がきっかけで、尼崎が人と自然が共生する魅力的なまちとして全国的に認知される日も近い…かもしれない。