サイハッケン 出屋敷駅前、名物女将のいる旅館

長く住んでいるまちにも意外と知らない魅力はまだまだあるもの。「へえ~こんなん知らんかったわ」という目からウロコの再発見!尼崎南部、ディープサウスの魅力をご堪能ください。

「元高校球児から毎年手紙が来るのが嬉しいわ」

阪神出屋敷駅界隈。ここにはかって旅館が建ち並んでいた。工場労働者の定宿だったのだ。昭和30年代は集団就職の最盛期で、南部地域には工場の煙突が林立し、出屋敷は活気に溢れていた。今では4、5軒がぽつぽつあるだけ。工場が立退いて労働者の数は激減した。

尼宝館はそんななか現在もバリバリ営業している。部屋数10、収容人数は30~40人。もとは近くにあった大谷重工の寮として昭和22年にスタート。その後は工場労働者や出張者の泊る旅館になった。女将の田中美佐子さん(65)は静岡県沼津から嫁いできた時、夜の出屋敷のにぎやかさビックリしたという。もうひとつ驚いたことがある。「工場の煤煙で部屋を掃除してもすぐ汚れちゃって」今では懐かしい思い出だ。

尼宝館にはもう1つの顔がある。尼崎で唯一高校野球の宿舎として毎春夏、球児を受け入れているのだ。昭和33年、先の大谷重工社長さんの紹介で富山県の魚津高校を受け入れたのが始まり。その後、山形県代表、今では愛媛県代表の定宿となった。「監督、コーチを含めて35人~40人泊まります」気を使うのは食事。「長くなると選手に食べたいものを聞くんです」昔は試合前はカツどん。今はゲンをかつぐことも少なくなったという。「球児はみんな礼儀正しくきちんと挨拶もしてくれる。地元でも評判がいいんですよ」試合が終わりバスで選手が帰ってくると、近所の人が出迎える。旅館が一番にぎわう瞬間でもある。■北原知也


旅館 尼宝館

素泊まり4,500円 1泊2食付7,000円
南竹谷 2-85-2
06-6411-2725