ディスカバー西大物

だてに数十年やってません まちの魅力はこんなお店が支えてるんです

ニュータウンの東側、昔ながらの西大物町はこんなに楽しい。出前自転車がまちを駆け抜け、路地裏では井戸端会議が開かれ、ランニングシャツ一丁の人たちが歩きまわる。軒先につながれた犬もだらりと昼寝。庶民的なイメージが強い尼崎のなかでも屈指の下町エリアを再発見。

地元スーパーの底力

スーパーえとう
8:30~20:30 日曜定休 06-6481-7631
「毎日特価品を用意してお待ちしています」

「ニュータウン」から東へ300メートル。「スーパーえとう」は創業28年の老舗スーパーだ。夕暮れ時ともなるとぞろぞろとお客が集まる下町の台所。店内は決して広くないが生鮮食品から惣菜まで品揃え充実。店先に赤ちゃんを乗せたままベビーカーを置いていても誰かが面倒を見ててくれる、そんな安心感もある。「今日はええカニ仕入れてますよ。奥さん好きやったでしょ」お客の好みから家族構成まで分かるというご主人の江藤勝利さん(59)が実に気軽に声をかける。お店の上に住む江藤一家にしかできない近所付き合い感覚こそがスーパーえとうの商売の原点である。

最近のマンション建設ラッシュについては「近くにちょっとしたまちができるような感じ。年配の方を中心に新しいお客さんも増えましたよ」と歓迎するご主人。しかし一方では大型スーパー出店の影響も気にかかる。「そら多少はお客さんもとられてしまうかもしれません。でも大型スーパーとうちでは来る層が違います」江藤家3人で切り盛りする小さなお店だが、買い物に来るのがしんどい人には電話で注文を受けて配達をしている。チラシも配り、家族で今できることはすべてしている。大型店との競合の行方は分からないが、お年寄りの多い界隈で地元からとても重宝されているお店であることは確かだ。

出前迅速、その道32年

そば処 竹生(ちくぶ)
11:00~14:00・16:00~20:00
日曜祭日休 06-6401-7096

「お母さん最近見んけど元気?」「このあいだ風邪ひいてなあ」何ともゆるーいほのぼのとした会話が店内で行き交う。そば処「竹生」は手打ちのそばとうどん、定食やどんぶりのメニューが豊富な「地元の食堂」だ。ご主人の麻生弘さんは32年間、界隈を出前自転車で走り廻り、まちの移り変わりを見つめてきた。「このへんは昔からの下町。いまだに狭い路地も残っている。最近はお年寄りの一人暮らしが増えてるのが気になるけれど…」と西大物町の今を語るご主人はたった1品だけの注文でも出前を届ける。

「そばは作ってからの時間が勝負。出前も早いですけど、やっぱりお店に来て食べてもらった方がおいしいですよ」と言うのはご主人の妻、千代子さん。20人も入ればいっぱいになる小さなお店、ふらりとのれんをくぐると温かい夫婦が迎えてくれる。

頼れる豆腐屋

大物食品
8:00~夕暮れ(夏は19時頃) 日曜定休
特売日の月曜土曜は1丁100円

朝の4時半に起きて仕込みをはじめ、売り切れるか日が沈んだら店を閉める。西大物町にゆったり流れる時間は、こんなお店があるからかもしれない。

「大物食品」はこのまちに店を構えて25年になる。使い込まれたステンレスの水槽には1丁110円の手作り豆腐が並ぶ。少し固めの「田舎どうふ」は昔懐かしい味がする。あつあげ、うすあげ、ひろうす、すべて商品はチラシで包むのが下町流。「うちは『まちみせ』やからね」と堀川光子さん。

マンションからの新しいお客さんも増えているそうだ。「新しいまちに住みはじめて、近所のことを知りたいと思っても聞く人がいないみたい。それでうちに色々と聞きに来られますよ」という堀川さんが目指すのは、まちの相談所のような豆腐屋。近所にあると頼もしいお店だ。