神主のぶらり街歩き

連載第40回 歯神(はがみ)さんを園田で発見!

今号は園田特集ということで、私も日ごろはなかなか足を運べない阪急園田駅まで向かうことにしました。大阪梅田経由で阪急電車神戸線を利用してもよかったのですが、やはり車内からも尼崎市の街並みを味わえる阪神バスを使わなければ、「ぶらりもせずに、阪急電車でどこ見ててん」と怒られてしまいます。尼崎市内線11番系統のバスに乗って約40分、どんどん変わりゆく市内の風景を見ながら阪急園田駅に降り立ちました。

駅から北西へ徒歩10分ほどの東園田町4丁目に白井神社が鎮座されています。御祭神は、天之手力男命(あめのたぢからおのみこと)。天の岩戸神話で、岩戸を開いた勇武の神さまとして有名です。

さて、この白井神社はいつの頃よりか「歯神」と称されるようになりました。寛政10年発行の『摂津名所図会』には「白井天王祠穴太村に在り世俗歯神と称し歯の患を祈願すれば平癒すとぞ」とあるそうです。言い伝えによると、境内にあった池に生息していた鯰(なまず)の粘膜を肌に塗ると、患いが治るとされ、たまたま歯を痛めていた人が頬にその粘膜を塗ったところ治ったことから、このような信仰が民間から生まれました。面白いのは、東園田やその周辺ではなく、大阪府下各所での信仰が広まったことで、崇敬講社(信仰を広める団体)が結成され、例祭当日には多数の講員(崇敬者)の団体参拝が行われていたそうです。また、歯患平癒が叶った祈願者は、お礼参りに「鯰の絵馬」を奉納する習慣があり、御社殿にはその一部が残っています。

かつては、歯患平癒を願って痛めている歯で噛むお守りを授与していたようですが、衛生上よくないということで、近年は「歯の守護」と書かれたお守りを授与されています。昨年、テレビ番組でこのお守りが紹介されたこともあり、宮司さんも驚くほど、多くの方が神社を訪れお守りを受けて帰られるそうです。いつまでも自分の歯で食事をすることはとても大切だと言いますし、歯の傷みは体の他の傷みの中で一番つらいですから、頼りたくなる気持ちも分かりますよね。

最後に、とても仲良くさせていただいている栃尾充孝宮司さんに、ご自身の歯の悩みについて聞いてみました。「歯神さんの宮司さんやのになあ」って歯医者さんに言われるとか言われないとか…。いずれにしても、歯神さんのお力を受けながら、健康な歯であろうと努力されていることだけは間違いなさそうです。


江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンなお社きふねさんの第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。ラジオ番組「8時だヨ!神さま仏さま」の過去の放送はインターネットでお聞きいただけます。