鰻と上海蟹を釣る達人たち

園田地区と小田地区の間を流れる藻川。園田橋をはじめいくつかの橋が架かり、河川敷には野球場あり、公園あり、おまけに堤防はドラマのロケ地として使われるなど、天気の良い日に散策するにはもってこいの川だ。

そんなのどかな川を漁場とするのが、尼崎市に唯一存在する漁業組合「藻川漁業協同組合」である。昭和28年に設立された猪名川水系漁業組合連合会に属する組合の1つで、現存している組合では猪名川水系の最も下流を漁場としている。

組合員は20名ほどで、みな本業がある傍ら、組合員としてたまの漁にいそしんでいる。アマに漁協があると驚かれるだろうが、この藻川で釣れるのはウナギ、モクズガニ(上海蟹)のほか、河口に近い関係でボラ、キビレ、クロダイといった海の魚も釣れるという。豊かな川だ。

漁としてよく行われているのはウナギの仕掛け漁。組合が所有している一艘の船を川に出し、ウナギ筒の仕掛けを順に川底に沈めていって掛かるのをひたすら待つ。すると見事なウナギが釣れるのだ。ただ収穫量はわずかで、基本は組合員が自分達で食べる分にとどまっている。そのため藻川のウナギが店先に並ぶことはほぼ無く、まさに幻のウナギと言えよう。もっとも立派な天然モノのウナギなので、買えるとなったとしても1匹5000円はくだらないだろう。

美味しいのだろうか。現組合長(二代目)の山本康治さんによると、本格的な下水処理が開始された昭和40年代以降、急速に川の水質は改善してきて、公害問題を経て、最近の水質は相当きれいになっており、獲れるウナギも食べてみるとびっくりするくらい美味だそう。

藻川漁業協同組合では、毎月第三水曜日は河川の清掃を行っているほか、毎年稚鮎の放流活動を行うなど、藻川の環境改善に積極的に取り組んでいる。組合員は最近若い人も増え、年会費6000円で誰でもなることができる。ただ入会にあたっては面接があるほか、年間出漁回数義務もあり、会員になるのはそう簡単ではなさそうだ。

いくら美味しいウナギを食べたいからといって、個人が勝手に藻川で獲ったら密漁で逮捕されるので注意。どうしてもウナギが食べたければ、組合員になってみるのも手だろう。