嗚呼、憧れの社宅ライフ
通勤のストレスが少ない、家族と過ごす時間が増える…社宅暮らしは、最高の福利厚生といえるだろう。製造業の多い尼崎なら、そのスタイルも多様だ。
住友金属工業
塚口町の社宅に暮らして5年目になる川畑さん一家。夫の俊一郎さんは、大阪本社で4年の勤務を経て、昨年から尼崎へ赴任した。「満員電車のない毎日が夢のようです」と、職住近接を満喫している。
6階建てで約80世帯が暮らす社宅は、オール電化ならぬオールガス対応のマンション。床暖房に浴室暖房、ペアガラスの窓…という設備の充実ぶりは、上司もうらやむほど。独身時代に寮生活を送り、各地の社宅暮らしも経験してきた川畑さんにとって、この物件は「給料以上にありがたい存在」。社宅で知り合った入居者とのおつきあいもできて、仕事の面でも好影響が出ているという。
そんな川畑家にも悩みはある。将来のマイホームだ。稲美町出身の夫にとっては、塚口の暮らしは充分に快適だが、吉祥寺出身の妻・綾子さんは首都圏のよさが忘れられない。1歳になった長男・俊矩君を育てながら、じっくり考えていくそうだ。
製造業O社
杭瀬のO社勤務のYさん一家は、5歳になる長女との3人暮らし。社宅のルールは、45歳で出ることと、ペットは飼わないこと。しかし、年齢制限はプラスに受け止めているようだ。「じっくり人生設計ができるので気持ちのゆとりが持てる」と妻のHさん。子どもが3人いる世帯はザラという実態が、何よりそれを物語る。
会社の目の前という立地条件から、仕事を終えたご主人がまっすぐ帰ってくるのも大きい。「周囲の目を気にして飲み歩けないのは不満のようですけど」と笑うHさんだが、一家団らんの時間が長いのは、主婦としては大助かりだろう。
転勤の多い入居者同士をつなげるのは、月に1度の清掃活動。新入りさんもここでご対面となる。その後は、団地の隅にある砂場を舞台に子どもを介したお付き合いが始まる。通園の送り迎えや外出のときはお互い預かったりして助け合う、「団地のよさがある、社宅らしい社宅」だ。