尼ニ住ム[amanism]
case03 馴染んだ団地で住み替え生活 [山本一男さんの場合]
「1階が見つかるなんて本当にラッキーでした」。娘夫婦が住む杭瀬団地に移り住んで10年の山本一男さん(67)、喜代子さん(66)夫婦。エレベーターがない4階の部屋のため、将来、足腰が弱った時のことを思い、近くの戸建住宅の物件を探し始めた矢先のことだった。下の階ほど人気が高い杭瀬団地では、1階は空きが出る前に買い手がつくほどなのだ。
「駅にも近いし、病院、市場も充実してるし」と、すっかり杭瀬の住みやすさに惚れ込んだ喜代子さんにとって、違う町に引っ越すことは頭になかった。歳をとってから引越し、痴呆にかかった母親を見ていたため、「自分は老後も住み慣れた場所で」との思いも強かった。
11月のある日、不動産屋の担当者から団地1階で全面リフォームされた物件が売りに出ている話を聞いた喜代子さん。早速、部屋を見に行った。まるで新築のような部屋に「何もかも気に入った」と即決した。
山本さん夫婦のように「住み慣れた杭瀬を離れたくない」と、団地内の住み替えを望む住民は多いという。また、団地で育った人が結婚を機に「親の近くがいいから」と購入する例も。若い世帯でも購入しやすい価格帯も魅力なのだ。おかげで築40年経った今も「ほとんど空き物件がない」という人気ぶり。古い建物の不便さとうまくつき合い、またリフォームを繰り返しながら住み継ぐ「amanism」がここに。
case04 街を見渡す高層生活 [伊元俊幸さんの場合]
各地の「駅近」に次々と建設され、風景のアクセントになっている高層マンション。見上げたことはあっても、その住み心地はどうなのだろう。JR立花駅から徒歩1分のツインタワー、フェスタ立花にお住まいの伊元さんを訪ねた。
主の俊幸さん(37)は平成12年、妻の由美さんとの結婚を機に入居。眺望云々以前に、通勤も買い物も駅へのお出かけも徒歩で済ませられる好立地で、都心回帰を実践している。27階建ての建物の中でも、かなり上のほうにあるお部屋からの眺めはゴージャスの一言。西は明石海峡大橋、南はPLの花火までを一望でき、遠くから流れてくる雲の動きで少し先の天気も読める。気候がよければ広めのバルコニーで朝食をとることもあり、夜景を眺めながらの夕食は、「我が家に帰ってきたと実感するひととき」だという。
「住まいを選んだときの基準は、生活圏を変えないことでした」。俊幸さんは南七松町、由美さんは水堂町の出身。街を歩けば同級生に出会い、商店街でまけてもらえるような付き合いを、引っ越しで犠牲にしたくなかった。「腐れ縁のようなもんです」というのが伊元さんの「amanism」。
住んでみて意外に不便だったことは、朝のエレベーターの大混雑。「これは予想外でしたね」と笑う。